東京電力福島第1原発で増え続ける汚染水を浄化した後の処理水について、政府は13日、関係閣僚会議を開き、海洋放出する方針を正式に決めた。専用設備の工事や審査などを経て、2年後をめどに海洋放出に着手する。残留する放射性物質トリチウムは濃度が国の基準の40分の1未満になるよう薄める。2041~51年ごろの廃炉完了目標までに放出を終える予定だ。
平成25年に議論が始まった処理水への対処は、政府の決断によってようやく動き出すことになる。ただ、政府決定に対し全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長が「極めて遺憾で、到底容認できるものではない。強く抗議する」との声明を発表するなど、今後の調整は難航も予想される。
菅義偉首相は13日に開いた関係閣僚会議で「政府が前面に立って安全性を確保し、風評対策を徹底することを前提に、海洋放出することが現実的と判断した」と述べた。梶山弘志経済産業相も閣議後記者会見で「(海洋)放出までの2年間で、地元の懸念などの払拭に努めていく」と強調した。
梶山氏はこの後、福島県入りし、内堀雅雄知事らに順次面会、放出への理解と協力を求めた。内堀氏は「今後精査し改めて県としての意見を述べる」と答えた。一連の会談終了後、梶山氏は「風評対策や安全性に関する懸念など厳しい言葉もいただいた。政府内でしっかり共有して今後の対応に役立てたい」と述べた。
閣僚会議が決定した「処理水の処分に関する基本方針」では、5つの処分方法の中から海洋放出を選んだ理由として、国内実績があり、トリチウム濃度の検知が確実なことを挙げた。東電に対し「風評影響の発生を最大限回避する責任が生じる」と強調。政府などが水産業の販路拡大などの対策を講じてもなお生じる風評被害については東電が賠償することを求めた。
政府は必要な対策を検討していくための新たな閣僚会議も設置する方針。(1)風評被害を抑制するための処分方法やモニタリング(監視)(2)国民、国際社会の理解醸成(3)水産物の生産、加工、流通、消費の各対策-などを主に検討する。
第1原発では、溶融した核燃料(デブリ)を冷やすための注水や流入する地下水などで現在も汚染水、処理水が増え続けている。東電はタンク容量が来年秋以降に満杯になるとみており、早期に処分方法を決める必要に迫られていた。