新聞に喝!

日米首脳会談 主要議題が「環境」で大丈夫か ブロガー・投資家 山本一郎

菅義偉首相、バイデン米大統領(ロイター)
菅義偉首相、バイデン米大統領(ロイター)

日米首脳会談が16日に迫り、衆議院選挙を控えた菅義偉(すが・よしひで)政権最大の山場が到来しようとしています。産経新聞でも「〈独自〉日米首脳、中国の人権に懸念共有へ ウイグル・香港『深刻』」(「産経ニュース」3日)など詳しく報じていますが、英国やカナダを差し置きバイデン米大統領が日本との会談を第一に持ってきた理由は米国のアジアシフト、すなわち対中国戦略において日本の役割を明確にしておきたいという考えが根底にあるからではないかと考えられます。いわば、米中対立の最前線として、米ソ冷戦時代と等しい役割を米国から期待されているのでしょう。

一方で、東京五輪開催問題や、ワクチン接種スケジュールなどの問題が山積し、福岡県や兵庫県の知事選に各補選、東京都議選などの政権運営を占う選挙も続く中で、安全保障に対する危機意識が国民の間で広がらないのは気になるところです。日本国内でもLINEの中国・韓国への情報漏洩(ろうえい)問題があり、安全保障上のリスクが指摘される一方、アジアでは香港問題を皮切りに台湾海峡では中国の挑発が止まらず、また、新疆(しんきょう)ウイグル自治区やチベット、内モンゴルなどでの中国の人権問題は喫緊の課題と受け止められています。中国に依存し過ぎた経済のサプライチェーンをどうするのか、日本は明確な答えを米国から求められる可能性が高くあります。

ところが、日本からはなぜか環境問題が主要なアジェンダとして米国側に提示されることになりそうで、うっかり合意したところで米議会がすんなり合意を承認するとは限りません。脱炭素社会を提唱する日本側が野心的な提案をのまされて虎の子の輸出産業が不利な立場に立たされる割に、米側は合意を守れない可能性を考えると、バイデン新政権初の対面での首脳会談の名誉もありつつ大変デリケートな立場に立たされる恐れも捨て切れないのです。

日米にオーストラリア、インドも交えた地域の安全保障のネットワークを早急に構築し、日本が置かれた立場で国益を追求するためには、単に対中国という新たな冷戦の文脈だけでなく、あらゆる個別の分野で日本が果たせる役割は何か、どこで存在感を発揮しようとするのかというグランドデザインを構築する必要があります。メディアが問うべきは、緊張が高まる国際環境の中で日本がいかなる存在を目指すか、国民の議論を広く喚起することではないでしょうか。

【プロフィル】山本一郎

やまもと・いちろう 昭和48年、東京都出身。慶応大卒。専門は投資システム構築や社会調査。情報法制研究所事務局次長・上席研究員。次世代基盤政策研究所理事。