ブロックチェーンによるエネルギーの大量消費を解消できるか:動き出したイーサリアムと「PoS」の潜在力

PoSをはじめとする大改修を予定しているイーサリアムの「Eth.2.0アップグレード」プロジェクトに参加しているソフトウェア開発会社ConsenSysのベン・エジントンによると、51%攻撃はPoSでも起こりうるが、実施するにはネットワークの残りの部分すべてを合わせた分の2倍のイーサが必要になると指摘する。「つまり、ブロックチェーンの安全性を担保しているステークが100億ドル(約11兆円)相当だった場合には、チェーンに有効な攻撃を仕掛けるには200億ドル(約22兆円)が必要になります」

さらなる前提として、攻撃が報告された場合にはイーサの価格が急落することになるので、攻撃者のステークの価値も粉々になる。PoWと同じように、不正行為を防ぐようなインセンティブが設定されているわけだ。しかしPoSの場合は、カリカリと音をさせながら電力を大量に消費するマイニングコンピューターは必要ない。理論上は、ノートPCでもバリデーターを運用できる。

PoSの有効性と難点

一方で、PoSは新しく複雑な仕組みであることが大きな難点であると、イーサリアム財団の研究者ダニー・ライアンは言う。「PoWはもっと単純です。PoWの複雑性は物理ハードウェアに押し付けることができますし、実際のソフトウェア設計もかなり単純です。PoSの最大の欠点を挙げるとすれば、仕組みがかなり複雑である点でしょうね」

つまり問題は、ネットワーク設計の健全性について人々に納得してもらうことが難しかったり、マイニングのような仕組みを手ごろに説明できる手段がないというだけではない。PoSはPoWに比べて検証が進んでおらず、PoSシステムを機能不全に陥らせる未知の方法が存在するということなのだ。

「PoWは12年ほど使用されており、有効であることがわかっています」と、テック系コンサルタント企業DecentraNetの創業者であるマット・マッキビンは言う。マッキビンはPoWを廃止する代わりに、そのマイニングのエネルギー源をよりクリーンにすることを提唱している。

実際のところ、PoSをきちんと実装することの難しさは、すでに示されている。15年にイーサリアムが産声を上げた際、開発チームはシステムをマイニングから「ステーキング」へと移行することをかなり早い段階で約束していた。当時は新しい仮想通貨が雨後の竹の子のごとく登場していたが、イーサリアムの開発チームの展望は、そうした新プロジェクトがPoSの仕組みを選択する上で一定の役割を果たした可能性があるのだと、ラウクスは指摘する。

EOSやカルダノといったいくつかの有名なブロックチェーンでは、さまざまなPoSの要素が使用されている。「将来的にPoSへ移行するというイーサリアムの暗黙の前提は、(PoWとは)別の視点を前に進める上で大きな役割を果たしました。独自のブロックチェーンを構築していた新規の開発者や企業が次々と、初期の設計案から即座にPoWを排除し始めたのです」と、ラウクスは言う。

移行にようやく現実味

ところが、イーサリアムがPoSに移行する予定日は延期に延期を重ねている。ライアンによるとその理由は、安全性と分散化(仮想通貨の根幹をなす2大原則)を確保しながらPoSのブロックチェーンを構築することが大変な作業だったからだ。

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