主張

韓国与党大敗 対中傾斜に警戒を強めよ

 韓国の2大都市、ソウルと釜山の両市長選で、いずれも保守系最大野党「国民の力」の候補が革新系与党「共に民主党」の候補に大勝した。

 来年3月に行われる大統領選の前哨戦と位置づけられた両市長選で陣営が大敗したことにより、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は残りの任期で厳しい政権運営を強いられることになる。

 文氏はこれを受け「国民の叱責を重く受け止め低い姿勢で国政に臨む」と述べた。留意すべきは文政権が支持層をつなぎとめるため反日政策を強化し、中国に傾斜する可能性があることだ。

 両市長選はともに、セクハラ問題が発覚した与党系市長の自殺や辞任に伴う補欠選挙として実施された。政権、および与党は都市部の住宅価格の高騰や、土地の不正投機疑惑にさらされていた。

 支持率低迷にあえぐ文政権にとって、この敗戦は致命的である。加えて後継大統領の有力候補だった李洛淵(イ・ナギョン)前首相が両市長選の選対委員長を務め、責任を問う声が与党内にある。与党は今、大統領選を戦える状況にはない。

 任期の末期に求心力を失った大統領は何をするか。思い起こすのは2012年、当時の李明博大統領による竹島上陸である。任期を半年残した李氏は側近のスキャンダルにまみれており、反日強化で支持をつなぎとめようとした。

 文氏は3月の演説で日本との歴史問題について「過去の問題は過去の問題として解決し、未来志向的な発展に一層、注力せねばならない」と述べた。一部に関係改善の姿勢を示したとの見方もあったが、一切の行動は伴っていない。いわゆる徴用工、慰安婦の問題でも今後、強硬姿勢に転じる恐れもあるが、国際法上無効な賠償要求などは、はねつければいい。

 懸念すべきは、対中傾斜に拍車がかかることだ。韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相は今月、初の外遊先に中国を選び、王毅国務委員兼外相と会談した。米国に先んじての中国訪問は異例中の異例だった。

 対北朝鮮融和を最大の成果とする文政権は、残る任期中の対話再開を目指して中国を頼る姿勢を、より鮮明にする可能性がある。

 バイデン米大統領は世界の現状を「民主主義勢力と専制主義勢力の戦い」と表現した。地勢的に中国と近く北朝鮮と接する韓国が民主主義勢力の弱点とならぬよう、注視しなくてはならない。