昨年9月に大阪府高石市で無戸籍の高齢女性が餓死した問題で、女性が死亡する約4年前、夫の死亡届を提出するために同市役所を訪れていたことが8日、関係者への取材で分かった。市は問題発覚後、「生前に女性と接点はなく、無戸籍とは知らなかった」と説明しており、矛盾が生じている。女性が無戸籍であるとの情報が内部で共有されていれば、餓死を防ぐことは可能だったが、市は当時の経緯について「調査する必要はない」としている。
関係者などによると、女性は昨年9月に自宅で死亡。当時78歳だったとみられる。この家で約20年前から、内縁の夫と息子と3人で暮らしていたが、自身と息子は無戸籍だった。
平成28年8月に夫が死亡した際、女性は市役所に死亡届を提出。ただ、届け出人の欄には、届け出資格のない夫の知人男性の名前を書いており、窓口で職員に指摘されたという。
最終的に、死亡届は夫の入院先の病院長の名前で提出され、受理された。女性は自身が無戸籍のため、知人男性の名前を記入しており、窓口で理由についてやり取りをしたとみられる。知人は取材に対し、死亡届提出時に「市職員から電話があった。途中で奥さん(女性)に代わり、『(死亡届は)自分で何とかするので大丈夫』といわれた」などと証言。女性は切迫した様子だったという。
この後、女性は夫の遺産を頼りに息子との2人暮らしを始めた。昨年夏ごろに遺産が底をつき、最後は水や塩で飢えをしのいでいたが、9月に餓死した。看病していた息子は「自分たちは無戸籍なので助けを求められなかった」などと話し、自身も衰弱して一時入院した。