新作演劇の無料公開を企画 クラファンで資金を募る 宮本亞門「皆と一緒に作りたい」

「もし150万円以上集まったら、この作品をリーディングではない演劇にも発展させたい。まず集まるかどうか、ですが」と笑う演出家の宮本亞門
「もし150万円以上集まったら、この作品をリーディングではない演劇にも発展させたい。まず集まるかどうか、ですが」と笑う演出家の宮本亞門

 ひとつの演劇を作る過程で、演劇を好きな仲間も作りたい-。愛する人を疫病で亡くしても舞台に立ち続けた女優を描くリーディング演劇「スマコ」を一から作り、その映像を無料公開する企画が進行している。総合演出の宮本亞門が中心となり、計画に必要な資金150万円は8日から開始するクラウドファンディング(CF)で集めるという。「皆の心と一緒に作っていくような演劇作品にしたい」と話す。(三宅令)

 大正7年、主演女優の松井須磨子の楽屋に刑事たちがやってくる。数日前に愛する男をスペイン風邪で失った須磨子に向かって、「お前が故意に疫病をうつして殺したのではないか」と言いがかりをつけ、「舞台に立つ資格などない」と責める。彼女が舞台に立ち続ける理由は何なのか-。

 明治・大正時代を駆け抜けた日本の女優第一号ともいわれる松井須磨子の生きざまを描く作品。

 現在のコロナ禍において演劇は「不要不急」とされ、関係者は存在意義について悩みながら、それでも舞台に立ち続けようとしている。その在り方は100年前にスペイン風邪が流行した当時の須磨子と重なる。

 「どんな状況でも演劇を続けることに意味があり、舞台に命をかけて生きる人がいる。それがお客さんに伝わったら」と話す。舞台が持つ、人や社会に与える熱量を、理屈で説明するよりも、演劇で表現して伝えようと試みる。「演劇を見たことがない人にこそ、この思いを知ってほしい」として、作品はユーチューブで無料公開する予定だ。

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