拉致被害者家族「命がなくなってきている」 菅首相に期限言及の新方針を手渡す

【拉致被害者家族等による菅首相との面会】菅義偉首相との面会後記者会見する横田早紀江さん=7日午後、参院議員会館(萩原悠久人撮影)
【拉致被害者家族等による菅首相との面会】菅義偉首相との面会後記者会見する横田早紀江さん=7日午後、参院議員会館(萩原悠久人撮影)

 北朝鮮による拉致被害者家族らが7日、菅義偉首相と官邸で面会し、早期の日朝首脳会談の実現を求める今年の運動方針と、2度目の作成となる金正恩朝鮮労働党総書記宛てのメッセージを手渡した。

 横田めぐみさん(56)=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(85)は「年をとり、(残りの)命がなくなってきている。なんとか家族みんなが帰れるようにしてほしい」と訴えた。

 3日に定めた運動方針では「全拉致被害者の即時一括帰国」を引き続き大前提とした。そのうえで、昨年相次いだ家族の死や残る親世代の高齢化を念頭に「親の世代が被害者と抱き合うこと」が「期限」と明示し、政府に早急な行動を求めた。

 面会で菅首相は「2002年に5名の拉致被害者の方が帰国して以来、1人の被害者の方の帰国もままならず、痛恨の極みだ」と陳謝。16日に控える、米ワシントンでのバイデン米大統領との首脳会談に触れ、「日本にとって拉致問題がいかに重要であるかということを直接訴え、理解をしてもらい、そして協力をして、拉致問題解決に努めていきたい」と決意を述べた。

 北朝鮮による拉致被害者家族らは7日の菅義偉首相との面会で、親世代の家族と被害者との再会が解決の「期限」とする今年の運動方針を手渡した。昨年は横田めぐみさん(56)=拉致当時(13)=の父、滋さんら親世代の死去が相次いだ。面会後の会見では、一刻も早い局面打開へ政府の具体的な取り組みを求める声が続いた。

 「菅総理には、親世代の健康面、体調面は現実的に厳しいものがあると伝えた」。会見でめぐみさんの弟、拓也さん(52)は、隣に座った母の早紀江さん(85)や有本恵子さん(61)=同(23)=の父、明弘さん(92)に視線を送りながら、そう述べた。

 昨年は滋さんが87歳で、恵子さんの母、嘉代子さんが94歳で死去。被害者のきょうだいも高齢化し、例年、面会に出席してきた田口八重子さん(65)=同(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(82)は今回、体調不良で欠席した。

 「拉致という国家テロを行った北朝鮮への怒りと、救出できない政府へのもどかしさで、私たちは歯ぎしりするほどの口惜しさを覚えた」。この日、菅首相に託した運動方針には、滋さんらの死去を受けた家族の痛切な心情を記した。

 明弘さんは、拉致問題の進展には米国の協力が不可欠との考えを示し、「バイデン政権にも、しっかりと立ち上がってもらいたい」と主張。16日に予定される日米首脳会談での日本側の働きかけに期待を寄せた。

 めぐみさんの弟、哲也さん(52)は、「(日朝首脳会談の早期実現に向け)日本政府はあらゆる方面でアプローチをしていると思うが、結果的に北朝鮮は歩み寄ってきていない」と指摘。残された時間の少なさを念頭に「違う方向がないのかも、検討してほしい」と求めた。

 また、八重子さんの長男、飯塚耕一郎さん(44)は、金正恩朝鮮労働党総書記に宛て、即時一括帰国を決断するよう促したメッセージに触れ、「われわれが出したように、菅総理からも金氏へメッセージを掲げてほしい」と述べた。