NY州が嗜好用大麻を合法化 「健康被害ない」誤解広がる

 【ニューヨーク=平田雄介】米東部ニューヨーク州で嗜好(しこう)品としての大麻の所持と使用が合法化された。大麻について、世界保健機関(WHO)は脳機能や精神などに障害が生じるリスクが高まると指摘する。麻薬単一条約でも規制される違法薬物で、国際的な薬物統制のルールに逸脱する動きだ。

 米国では「大麻使用による健康被害はない」との誤解が広がり、米メディアによるとニューヨークは大麻を合法化した15番目の州となった。

 クオモ知事(民主党)が3月31日、州議会が可決した合法化法案に署名し、成立した。21歳以上の成人による3オンス(約85グラム)までの所持や、たばこの喫煙スペースでの使用を認めた。

 将来は販売や配達、個人使用を目的とした自宅での6株までの栽培も認められる。過去に大麻関連で有罪判決を受けた数千人の犯罪歴も抹消されるという。

 大麻の所持や使用に人種差はないとみられる中、黒人やヒスパニック(中南米系)の摘発件数が不釣り合いに多いため、民主党議員が合法化を求めていた。

 州政府は合法化により3~6万人の雇用拡大と3億5千万ドル(約385億円)の税収増と見込む。税収の4割は黒人や中南米系ら少数派の支援策に充てるという。

 しかし、大麻は麻薬単一条約でモルヒネやコカインと並んで「依存性が強い薬物」に分類される。国連麻薬委員会は昨年12月、医療や研究目的の大麻を「特に危険」とする分類から削除するWHOの勧告を承認したが、嗜好品としての使用を促してはいない。

 日本の大麻取締法には国外で大麻をみだりに栽培したり、所持したり、譲り受けたり、譲り渡したりした場合などに罰する規定がある。在ニューヨーク日本総領事館は「手を出さないように」と呼びかけている。

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