【日曜に書く】論説委員・藤本欣也 香港人は本当に敗れたのか(2/2ページ) - 産経ニュース

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日曜に書く

論説委員・藤本欣也 香港人は本当に敗れたのか

業を煮やした中国当局は21年末、国家安全法を導入して民主派の大量逮捕に踏み切る→香港市民が大規模なデモやストライキで抵抗する→国際社会も厳しい対中制裁を発動する。

中国に内外から圧力をかけて譲歩を迫り、普通選挙導入などの民主化を実現する-という青写真を描いていたのだった。

中国は戴氏の読み通り、国安法を香港に導入した。想定より1年半早かったにすぎない。

「香港という自由世界が専制的な中国に屈していく。自由世界のリーダーである米国がこの局面にどう対応するのか…」

20年5月、全人代で国安法の導入方針が決まった直後の取材に、戴氏はこう語っていた。

悪手打ち続ける中国

国安法の施行に伴い、国際公約である「一国二制度」を死に追いやった習政権への批判が、米欧で一気に高まった。戴氏の狙い通りだった。

施行後、民主活動家が逮捕されるたびに批判のボルテージは上がっていく。それを承知の上で、著名活動家の黄之鋒氏(24)や黎智英氏(72)は塀の向こう側に赴いたのだ。

「われわれに残された闘争手段、それは捕まることです」。ある民主活動家は吐露する。

戴氏自身、今年に入り、国安法違反(国家政権転覆罪)で逮捕・起訴され収監中の身だ。

香港政策の指揮を執る夏氏が「反中分子の極悪人であり厳罰を与えねばならない」と名指しするのが黄、黎、戴の3氏である。国安法違反の最高刑は終身刑だ。が、3人に厳罰を科せば国際社会の一層の反発を招く。

習氏は今、香港を計画通り支配下に置きつつあると、ほくそ笑んでいることだろう。しかし、シナリオ通りに動かされているのは共産党の方だと言えないか。悪手を打たされ続けているのは中国ではないのか。

香港人は自らを犠牲にすることで、国際社会の信用失墜という代償を中国に払わせた。来年2月に北京冬季五輪を控え、ボイコットの動きが広がれば習政権のメンツは丸つぶれだ。来秋には党大会も開かれる。

果たして民主派は敗北してしまったのか。国際社会が沈黙すれば、そう言わざるを得ない。しかし中国に圧力をかけ続けることができるなら-。香港人が敗れたと言うにはまだ早い。(ふじもと きんや)