正論5月号

黄昏のプーチン体制に見切りつけろ 産経新聞外信部次長兼論説委員 遠藤良介

ロシアのプーチン大統領=3月22日、モスクワ郊外の公邸(タス=共同)
ロシアのプーチン大統領=3月22日、モスクワ郊外の公邸(タス=共同)

 ※この記事は、月刊「正論5月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

 プーチン・ロシア大統領の私生活や健康不安に関する暴露情報が昨年末から有力インターネット・メディアなどで噴出している。毒殺未遂に遭った反体制派指導者、ナワリヌイ氏の陣営もプーチン氏の「隠し宮殿」を告発し、一月には大規模な反政権デモが行われた。二十年以上も最高権力の座にあるプーチン氏の威信低下が急速に進んでおり、露内政は流動化の兆しを見せている。

 プーチン氏の私生活は長らく、報道関係者にとって「絶対的なタブー」だった。主要民主主義国の首脳とは違い、プーチン氏は「家族の安全」を理由にプライベートの情報を徹底的に秘匿し、国民思いの「善良な指導者」像を作り上げてきたのだ。その化けの皮がどんどん剥がされている。

新体操の元女王が社長に

 ネット・メディア「インサイダー」は昨年十一月、プーチン氏の事実婚の相手とされる元新体操選手のカバエワさんとその親族らの資産状況を特報した。「プーチンに近いオリガルヒ(新興寡占資本家)は非公認のファーストレディにいくら払っているか」と題した記事によると、カバエワさんには二〇一八年だけで七億八千五百万ルーブル(約十一億六千八百万円)もの収入があった。

 カバエワさんは一四年から、政府系テレビ局「第一チャンネル」や親政権紙「イズベスチヤ」などを傘下に収める巨大メディア・グループの社長を務めている。このグループの大株主はプーチン氏の旧友で金庫番として知られる銀行家、コワリチュク氏であり、カバエワさんは情実人事で社長の座にあると考えるのが自然だ。

 カバエワさんには、貧困家庭や障害児の支援を謳う慈善基金があり、メディア・グループ傘下のテレビ局が募金を集めているが、一九年には基金が二百九十万ルーブル(約四百三十一万円)しか慈善目的に支出していないことも判明した。カバエワさんの妹には、プーチン氏側近の実業家からスポーツ施設の経営会社や不動産が譲渡されていた。

 カバエワさんは一九年五月に男の双子を出産したとされる。同じ年に露保健省の産婦人科医務総監を務めるアダミャンさんと娘が、モスクワ中心部の一等地に十億ルーブル(約十四億九千万円)相当の高級アパートを入手していたことも報じられた。カバエワさんは、アダミャンさんの監督下で出産したとされている。

 カバエワさんは一五年にも男児を出産しており、この年にはプーチン氏に近い実業家のコルビン氏とティムチェンコ氏がカバエワさんの祖母にいくつかの高級アパートを譲渡したとも報じられた。

 プーチン氏は一四年に離婚した前妻、リュドミラさんとの間に二女をもうけた。リュドミラさんとの不仲やカバエワさんとの関係は離婚前から長らく噂されていたが、ここにきてカバエワさんと親族がいかに特権的な生活を送っているかが明かされた形だ。

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