コンテナ船の積み荷が荒天の影響で崩れ、海の底に沈んでしまう事故が相次いでいる。ある船は悪天候によって1%2C800以上のコンテナを失い、損失額は史上最大規模になる見込みだ。こうした事故が続く大きな要因のひとつが、新型コロナウイルスのパンデミックによる米国向け貨物の急増とされる。いったいどういうことなのか。
TEXT BY AARIAN MARSHALL
TRANSLATION BY MITSUKO SAEKI
WIRED(US)
掃除機から「ケイト・スペード ニューヨーク」のアクセサリー、少なく見積もって15万ドル(約1%2C630万円)分もの冷凍エビ、そしてコンテナ3個分の子ども服まで--。これらはすべて、2020年11月下旬以降に太平洋の底に沈んでいったものの一部である。
子ども服ブランド「Carter’s」の最高財務責任者(CFO)のリチャード・ウェステンバーガーは、ある会議の席上で次のように語った。「深海の引き揚げ事業に資金を投じようという人が現れれば、お宝が次々に見つかるに違いありません」
こうした事態の原因として考えられるのは、悪天候のほか、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に起因する米国向け貨物の急増、そして急激に横揺れが激しくなる「パラメトリック横揺れ」と呼ばれる現象である。
太平洋では20年11月以降に少なくとも6件の事故が発生しており、航行中の貨物船から海に落ちたコンテナの数は計2%2C980個以上にも上る。世界海運評議会(WSC)によると、この数字は08年から19年までの年間コンテナ落下数の2倍以上にもなるという。
悪天候に輸送量の急増が原因に
船会社の多くが、事故原因として悪天候を挙げている。例えば、世界最大規模のコンテナ船社であるマースクが運航するコンテナ船「Maersk Essen」は21年1月中旬、中国からロサンジェルスに向かう途中で750個のコンテナを失った。
報道機関に向けた声明のなかでマースクは、「北太平洋を横断中に何度か激しい荒天に遭遇した」と説明している。『WIRED』US版の質問に対する同社からの回答は得られていない。
同じくマースクの「Maersk Eindhoven」も2月中旬に「猛烈なしけ」に巻き込まれ、船全体を停電に追い込むほどの嵐のなかで260個のコンテナを海にのまれている。また、中国南部からカリフォルニア州ロングビーチの港に向かって航行中だったオーシャン ネットワーク エクスプレス(ONE)のコンテナ船「ONE APUS」は、20年11月に同社が「強風と巨大な波のうねり」と表現する悪天候のなかで1%2C800を超えるコンテナを失った。その損失額は史上最大規模になる見込みだ。