「ワクチンパスポート」が世界で拡大 米欧、経済再開の切り札

■偽造防止など課題

 ワクチンパスポート導入にあたっては、偽造防止や個人情報保護など克服すべき課題は少なくない。多くの国が海外渡航者に提示を求めることになれば、国際的な基準も必要になるとの見方もある。

 ワクチンを接種しないことを選んだ人が不利に扱われかねず、スマホを利用しない人への配慮も必要になる。米南部フロリダ州のデサンティス知事は2日、市民権を侵害するとの立場から「社会参加するためだけに証明を求めるのは受け入れられない」と批判し、事業者による接種歴の提示要求を禁じる行政命令を出した。

■中国、コロナ後主導狙う

 中国は3月上旬から、海外渡航者向けに中国版ワクチンパスポートとなる「国際旅行健康証明」を発行している。スマホのアプリを使い、ワクチンの接種状況などを表示する仕組みだ。

 ベースになったのは新型コロナの流行後、国内で普及させた「健康コード」。PCR検査の結果や感染拡大地域への滞在歴などを示し、商業施設や観光地などに入る際に提示することが一般的になっている。現在はワクチン接種情報も含まれる。プライバシー侵害の懸念が指摘される一方、政府は感染抑止で効果を発揮したと自信を深めている。

 中国外務省は国際旅行健康証明について「各国と相互認証の仕組みを確立したい」とし、海外での利用拡大に意欲を見せる。来年2月の北京冬季五輪もにらみ、感染対策と人の往来の円滑化を両立させる考え。

 中国は3月、日本やタイなど世界各地の大使館を通じ、中国製ワクチン接種者に対する査証(ビザ)申請時の優遇措置も表明。これをテコに自国製ワクチンの承認を各国で進める思惑が指摘される。中国版ワクチンパスポートの導入と合わせて、ポストコロナ時代の国際標準作りを主導する思惑があるとみられる。(ニューヨーク 平田雄介、ワシントン 住井亨介、パリ 三井美奈、北京 三塚聖平)