「人は血管とともに老いる」といわれる。年齢を重ねるほど血管はしなやかさを失い、硬く・詰まりやすくなっていく。さらに、動脈硬化が進むと高血圧になりやすくなるだけでなく、血液中のコレステロールが血管に沈着すれば、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクも高くなる。
血管は加齢とともに生じる老化という運命には逆らえないのだろうか。
実は、血管年齢は何歳になっても若返ることが可能だ。そして、そのコツは「運動」だ。
では、どのような運動が効果的なのか。血管の老化を防ぐ上で最も効果的な運動は、「有酸素性運動」といわれる運動で、ウオーキング、軽いジョギング、水中運動などがおすすめ。
運動の強さは「ややきつい」と感じる程度。運動時間は1日30~60分程度、週3~5日が適している。歩数でいえば、1日1万歩を目指そう。それらを行うことで、脂肪を燃焼するだけでなく、血管も若返らせ、外見のみならず、カラダを内側からキレイにすることができる。
「運動する時間がない」「外での運動はイヤ」という人には、ストレッチ運動はいかがだろう。
最近のわれわれの研究結果から、ストレッチ運動だけでも血管の老化を防ぐ効果があることが分かってきた。10分間のストレッチを朝と夜の1日2回、時間のあるときに行ってみてほしい。仕事の合間やテレビを見ながらでもいい。コツは、ストレッチ中はゆっくり呼吸すること▽痛気持ち良い程度にストレッチすること▽ストレッチとストレッチの間に10~20秒の休憩をとること-だ。
血管の若返りに有効な方法は「運動」で間違いない。自分のライフスタイルや体力レベルに合った運動スタイルを用いることが重要。体力のある人は比較的強度が高いランニングや、高い強度の運動の間に休息を挟む「高強度インターバル・トレーニング」を、体力に自信がない人やリモート勤務で家にこもりがちな人は簡単なストレッチから始めてみてはどうだろうか。
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家光素行(いえみつ・もとゆき) 立命館大スポーツ健康科学部教授。川崎医療福祉大を卒業後、筑波大大学院で博士(医学)の学位を取得、同大学院人間総合科学研究科(体育科学専攻)助手を経て、立命館大学スポーツ健康科学部准教授。平成26年より現職。