天皇、皇后両陛下は3月26日、皇居・宮殿「松の間」で、新型コロナウイルスの感染拡大のため1月から延期されていた「歌会始の儀」に臨まれた。秋篠宮ご夫妻をはじめとする皇族方もご参列。「実」をお題に、両陛下や皇族方のお歌に加え、1万3657首の一般応募から入選した10人の歌などが古式ゆかしい節回しで朗詠された。
天皇陛下は「人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る」とのお歌に、新型コロナの収束を願う思いを込められた。皇后さまは、感染拡大で人々の日常が変わっても、変わらぬ自然の営みに対する感慨を「感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし」と詠まれた。
今年の歌会始の儀は感染防止対策として、歌を詠み上げる役がフェースシールドを着用し、周囲にアクリル板を設置。一部でオンラインを導入し、入選者の1人がモニター越しに参加するなど異例の形となった。両陛下は入選者の歌が詠み上げられると、一人一人に目を向け、うなずきながら耳を傾けられた。
両陛下は儀式終了後、宮殿で入選者らと懇談された。陛下は、80歳と入選者で最年長の秋田県の男性に「いいお歌ですね」と言葉をかけられたという。皇后さまは、教育実習の経験を詠んだ長野県の女性に「歌を始められたきっかけは何ですか」とご質問。女性が、過去に歌会始の儀で入選したことのある祖母の影響を受けたと説明すると、皇后さまは「よろしくお伝えください」と述べられたという。
陛下は4月1日、松の間で、同日付で侍従長に就任した別所浩郎(こうろう)氏の認証官任命式に臨まれた。前任の小田野展丈(のぶたけ)氏は同日付で勇退した。小田野氏は陛下が皇太子時代の平成28年5月から、代替わりを挟んで約5年間にわたり、側近トップとしてご活動を支えた。