朝晴れエッセー

印象に残る素敵な青年・4月1日

もう20年以上前、当時住んでいたマンモス団地で、ある年の新聞に「〇〇県出身の〇〇です。1年間新聞配達担当します。来年大学受験するために奨学金で勉強しながら配達します。よろしくお願いします」という丁寧な自筆の折込が入っていた。

当時は関東でも産経新聞の夕刊があり、夕刻に新聞配達をするこの青年は、夏は頭に手ぬぐいを巻いてエレベーターは使わずいつも階段を使っていた。

配達先のおばちゃんや子供たちの顔も覚えてくれて、気持ちよく挨拶を交わすようになっていた。

翌年のバレンタインデー、私は玄関のドアに「新聞配達のお兄さんへ。いつもご苦労様です」とメモをつけてチョコレートを入れた紙袋を下げて買い物に出かけた。

帰りにちょうど夕刊配達中の彼に「ありがとうございま~す」とお礼を言われ、ふと止めてある自転車を見ると、前カゴに私のもの以外にもチョコらしき紙袋が数個入っていた。やっぱりね。彼は他の人からも好感を持たれていたんだ! と合点した。

1カ月後の3月14日、玄関のベルが鳴った。「ホワイトデーのお届け物です」と明るい彼の声。「1年間ありがとうございました」と娘たちにお菓子を手渡してくれた。

大学受験のことを思い出し聞いてみると「4月から〇〇大学に通います」と満面の笑みでこたえてくれた。私たちは心から「おめでとう。やったね」と祝福した。

彼は今頃どうしているかな。働き盛りの40代。社会に貢献する素敵な大人になっていることだろう。この季節になると毎年思い出す。

古根春美 61 東京都練馬区