鑑賞眼

OSK日本歌劇団「春のおどり」 晴れやか桐生トップ最後の舞台

【鑑賞眼】OSK日本歌劇団「春のおどり」 晴れやか桐生トップ最後の舞台
【鑑賞眼】OSK日本歌劇団「春のおどり」 晴れやか桐生トップ最後の舞台
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満開の東京の桜が、「唯一無二」とたたえられる男役、桐生麻耶(きりゅう・あさや)の花道を祝福するかのようなレビュー公演。桐生は今公演を最後にトップスターを勇退し、特別専科に移って来年のOSK日本歌劇団創立100年を支えるだけに、湿っぽさは皆無。和物と洋物のレビューの2部構成で、完成された男役の美学と、コメディーまでこなせる芸域の広さを見せ、集大成にふさわしい晴れやかな舞台となった。

第1部「ツクヨミ~the moon~」(尾上菊之丞=おのえ・きくのじょう=構成・演出・振付)は、月をテーマに3時代を巡る。桐生が飛鳥時代の蘇我入鹿、戦国時代の伊達政宗、江戸時代の堀部安兵衛にそれぞれふんし、踊る。これが従来の和物レビューの枠を超えた、攻めている舞台で楽しい。戸部和久脚本。

まず入鹿では、映画「スターウォーズ」のダースベイダーのようなアンチヒーローになり切って悪に徹し、中臣鎌足(翼和希)や中大兄皇子(登堂結斗=とうどう・ゆいと)に滅ぼされるまでを、赤いライトや陰影も効果的に使い、堂々たる大きさで見せる。

度肝を抜かれたのがハードロックな政宗で、首にDJ風の大きなヘッドホンをかけた桐生が、ギラギラの衣装に眼帯姿で、「ダテッ、ダテッ、ダテッ…」とシャウト。だが、この傾奇者(かぶきもの)の独眼竜が、次期トップの楊琳(やん・りん)演じる出雲阿国(いずものおくに)と出会うと、踊り比べで真剣勝負を見せる。楊の女役姿が色っぽく、印象的な愛の場面になった。さらに安兵衛では、高田馬場の決闘に向かう疾走を、周囲が持つ蔵や屋敷の道具が動く仕組みで、群舞的に見せる。出演者全員が一体となって、桐生をもり立てる気持ちが伝わり、胸が熱くなった。骨太の男役の魅力とコミカルさを併せ持つ、桐生の貴重な個性が生かされた、好舞台である。