鑑賞眼

スターダンサーズ・バレエ団「Diversity」全く違う個性を楽しむ

失意のヘイガー(喜入依里)は森の中、追いかけてきた友達(池田武志)によって救われる(c)Kiyonori Hasegawa
失意のヘイガー(喜入依里)は森の中、追いかけてきた友達(池田武志)によって救われる(c)Kiyonori Hasegawa

 20世紀以降に作られたバレエの名作から、まったく異なる個性の3作品を上演した。

 ウィリアム・フォーサイス振付の「ステップテクスト」(世界初演は1985年)。現代的な感性の作品で、無音のなか始まるともなく始まる。切れ切れに響くバッハのシャコンヌと、舞台袖から斜めに差し込む光が印象的で、空間には緊張感がある。黒いレオタードの男性3人(池田武志、石川聖人、林田翔平)と、赤いレオタードの女性(渡辺恭子)が、入れ代わり立ち代わり、デュオやソロを踊り、奇妙にねじれ、武道の型を思わせるドラマチックな身体表現が興味深い。男性たちが女性を奪うようにも、女性に従うようにも見え、抽象的だからこそ、観客の心象を重ね合わせて多様な解釈が可能となる。

 アントニー・チューダー振付の「火の柱」(1942年)。厳格な姉と奔放な妹に挟まれ、抑圧されてきた3姉妹の次女ヘイガー。ひそかに好意を寄せていた男友達を妹に取られ、衝動のまま悪い男に身を任せて妊娠する。ヘイガーは人々から非難されるが、戻ってきた友達によって救われ、2人は月下を歩いていく。

 喜入依里(きいれ・えり)演じるヘイガーの硬直した動作は終盤、憑き物が落ちたように伸びやかになり、鬱屈、衝動、羞恥といった負の感情からの解放を物語る。西原友衣菜演じる妹のあざといかわいらしさはいっそ悪魔的で、喜入ヘイガーと好対照だ。

 ジョージ・バランシン振付の「ウェスタン・シンフォニー」(1954年)。コロナ禍により、当初予定のジェローム・ロビンス振付「コンサート」が、海外から指導者を招聘(しょうへい)できなくなったため、同作品の国内バレエ団初の上演を断念し、演目が変更された。どこか懐古的な西部劇の世界で、一軒の酒場を背景に、カウボーイやダンスホールで働く女たちの陽気な騒ぎ。クラシックバレエを基調に、フォークダンスを取り込んだ。気取った色男と、セクシーでキュートな美女の恋の駆け引きも軽やか。生き生きとした乱れのない群舞と、愉快で楽しいショーのような雰囲気に客席がわいた。

 いずれの作品も国内ではスターダンサーズ・バレエ団のみがレパートリーとする。変更があったとはいえ、タイトル通りの多様性に富み、バランスが良く、以前もこの組み合わせの公演があったのはうなずける。3月28、29日。東京都豊島区の東京芸術劇場プレイハウス。(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。