英語圏、日本文学に熱視線 「文芸ピープル」で活写

 さらに、大学には属さないフリーランスの若手翻訳家が増え、同世代作家の新作によく目を向けるようになった。新しい才能の発掘に意欲的な独立系出版社がそれをサポートする好循環も。村田沙耶香さんの芥川賞受賞作『コンビニ人間』の成功も、その流れの延長上にある。コンビニで働く独身女性の世間との格闘をつづる物語は、フリーの竹森ジニーさんが英訳を手掛け、2018年に英米で出版。合わせて25万部を超えるベストセラーになった。

 「多くの国で議論されている性差別などの問題を、欧米作品とは違う女性像を通して描いたと評価されている。同時に『風変わりな作風』や『ユーモア』に着目する読者も多かった」

 面白い逸話もある。川上弘美さんの『センセイの鞄(かばん)』の当初の英題は「The Briefcase(かばん)」。その後、登場人物のセリフと舞台設定にちなむ「Strange Weather in Tokyo(東京の妙な空)」に改題したところ部数が大きく伸びたという。「TOKYO」という記号の訴求力はまだ結構強いらしい。

 「翻訳を出し続けるには海外の翻訳者や編集者と固い信頼関係を築くことが大切。一過性のブームに終わらせないためには幅広くいろんな作品を売り込む努力も必要でしょう」

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