防衛省が4月1日付で本省室長に部外から公募で中途採用した人材を初めて充てることが30日、分かった。宇宙・サイバー・電磁波という防衛の新たな領域(新領域)のうち、宇宙を担当する枢要ポストの宇宙海洋政策室長に登用し、政策立案などを担わせる。サイバーを担当するAI・サイバーセキュリティ推進室長も公募したが、採用は見送り、人材の獲得と育成で課題も浮き彫りになった。
防衛省は宇宙海洋政策室長とAI・サイバーセキュリティ推進室長について昨年末、民間企業を含め部外からの公募を実施。宇宙海洋政策室長に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の男性(47)を採用した。
任期は2年。宇宙海洋政策室の業務の大半は宇宙のため、専門的な知識と経験が豊富な人材を招く時限的な助っ人採用といえる。
宇宙海洋政策室とAI・サイバーセキュリティ推進室は平成31年4月発足の新しい部署で、室長は「キャリア」と呼ばれる総合職のポストだった。公募担当者は「新領域分野の人材の獲得・育成は急務の課題」と説明し、公募に踏み切った理由はここにある。
キャリアとして採用されると、政策から予算、装備まで多岐にわたる部署を2年前後で渡り歩く。省の業務を幅広く知る万能型の育成だが、特定の分野に精通した人材は育ちにくい。
自衛隊幹部は「新領域の知識は一朝一夕には身につかない。軍事分野は細分化が進み、専門性もますます高くなっており、従来のキャリアの人事では対応できない」と指摘する。
自前で人材を育てられないからといって、部外からの中途採用に頼り切るわけにもいかない。
AI・サイバーセキュリティ推進室長の公募では、サイバー攻撃発生時の司令塔としての役割を求め、「システムの弱点など機密を扱うポストに部外からの中途採用者を充てることは情報保全で問題がある」と懸念されていた。結果的に適任者は見つからず、採用を見送った。
新領域を主導する人材の育成は急務の課題だ。(半沢尚久)