米国のカリスマ投資家によるリスクを過剰に取った取引に、大手金融機関が揺れている。三菱UFJ証券ホールディングスは30日、欧州子会社で米国顧客との取引に関連した損失計上の可能性を発表した。損失は約3億ドル(約330億円)を見込むが、今後の市場動向などにより増減する可能性がある。29日には、野村ホールディングスとスイスの金融大手クレディ・スイスも同様の発表をしており、影響の広がりが懸念される。
欧米メディアによると、これらの損失には、著名なヘッジファンド出身のビル・ホワン氏が率いる資産管理会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引が関係している。
アルケゴスは証拠金を積んでその何倍もの取引をする手法で、米メディア大手バイアコムCBSなどの株を大量に保有していた。これらの株価が急落したことで発生した追加の証拠金(追証)を払えず、保有株を投げ売りしたようだ。
アルケゴスと取引をしていた日米欧の金融機関もこれに翻弄された。このうち野村は損害の見込み額や取引内容を明らかにはしていないが、顧客への請求額は26日時点で約20億ドルと試算。すでに条件を決めていた米ドル建て社債の発行もいったん見送った。
エコノミストの豊島逸夫氏は「米金融当局からより強い監督を受ける米投資銀行は早々に見切ったのに対し、野村やクレディなどの日欧勢は逃げ遅れた」との見方を示す。
影響は東京株式市場にも波及した。野村株は29日、30日と続落し、その他の金融株も足を引っ張られた。
日本取引所グループ(JPX)の清田瞭最高経営責任者(CEO)は30日の会見で、野村の奥田健太郎グループCEOに対し、事態に進展があった際の適切な情報開示を要請したことを明らかにした。