朝晴れエッセー

守り神の湯たんぽ・3月29日

日頃は自分の部屋にこもっている受験生の娘が「今日は眠れないからお母さんの横で寝る」と言ってきた。

受験生といっても、音楽大学を志望しているため一般の勉強と違い、毎日「和声」と「伴奏づけ」の練習。

その日、レッスンを受けている先生より、「浪人して基礎をしっかりと積んで入るのもあり。今年は志望者が多いので覚悟するように」と言われショックを受けたようだ。

本命の大学しか受験しないため、親の私も不安になったが、とにかく娘の気持ちを落ち着かせるのにどうしようか考えた。

娘が小学生の頃、秋田に住んでいたため寒くて眠れない夜が続き、毎日湯たんぽを入れていたのを思い出した。その頃のように布団の上からトントンしながら、「大丈夫、大丈夫」と言っていると、落ち着いたのか、寝息が聞こえてきた。

40歳を過ぎれば、立派なお母さんになれると思っていたが、そんなことはない。一喜一憂の自分を振り返りつつ、母にならせてくれてありがとうという気持ちでいっぱいになった。

次の日から、娘はまた勉強に励み、大学には無事合格できた。

コロナ禍の巣ごもり生活中、断捨離三昧で一度は捨てようとした湯たんぽ。東日本大震災で停電にあったとき、この湯たんぽをこたつに入れて家族で寒さをしのぐことができたのを思いだし、捨てることを思いとどまった。

この湯たんぽ、足だけではなく、心まで温かくしてくれる守り神なのかも。またいつか助けられる日が来ると思って押入れにしまった。

別府円香 47 東京都町田市