「今日で最後なんです」。毎日のように買い物をしているコンビニエンスストアで、顔なじみの店員さんがちょっと残念そうに、でもうれしそうに教えてくれた。配属先が決まってまもなく大阪を離れるという。明るくて元気、接客業にはぴったりの人だからどこでも好かれるだろう。「がんばって」と声をかけた
▶毎朝、電車で通過する駅のそばに建設中のホテルがあって、長らく基礎工事が続いていたところ、最近あっという間に建物が建ち上がり始めた。人も同じかな、と思う。時間をかけてきちんと土台ができれば、その先の成長は早いものだ
▶期待と不安に胸を膨らませた新社会人らが、コロナ下の街を歩く。ビルの谷間の公園の、満開の桜にも気づかぬ風で。まずは1週間、そして1カ月、1年と夢中で過ごしてほしい。「桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命(いのち)をかけてわが眺めたり」(岡本かの子)。見ている人はきっといるから。