地方テレビ局、ライバル解消の兆し 系列超えネット配信で協力 背景に財政難 - 産経ニュース

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地方テレビ局、ライバル解消の兆し 系列超えネット配信で協力 背景に財政難

地方テレビ局、ライバル解消の兆し 系列超えネット配信で協力 背景に財政難
地方テレビ局、ライバル解消の兆し 系列超えネット配信で協力 背景に財政難
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 地方のテレビ局が、インターネット配信で、系列の枠を超えて協力する動きが進んでいる。宮城県では2月、民放4局がテレビ番組を放送と同時にネットでも流す同時配信の実証実験を実施。愛知県でも、民放4局による配信サービスが開始から1年を迎えた。放送ではライバル関係にある各局だが、放送と通信の融合が進むなか、配信分野では連携して商機の拡大を目指している。

6割超が放送エリア外で閲覧

 「同時配信はなかなかお金のかかることで、ローカル局の財政基盤だと1局でやるのは将来的に考えて、成り立つのかどうかという部分があった。もう、(他局を)ライバルといってられないという感じです」

 東北放送、仙台放送、宮城テレビ放送、東日本放送の4局による同時配信実験「LIVE MIYAGI(ライブミヤギ)」で各局のとりまとめを行った宮城テレビ放送の阿部和彦技術推進部長は、他局と協力した背景をこう話す。

 ライブミヤギのサイトでは2月14日から28日まで、4局の番組9本をテレビとネットで同じ時間に流した。プロ野球楽天の沖縄のキャンプの様子をリポートしたものや、プロ100人が選んだ宮城県内のラーメン店を紹介した内容の番組で、地元企業のCMも配信では登場。その中ではショッピングモール「楽天市場」などで出品されている対象商品の購入で使えるクーポンが配布された。

 テレビでは宮城県内でしか見ることができないが、ネットではほかの地域でも閲覧できる。今回の実験では、最も視聴が多かったのは地元宮城県だが、2位と3位は東京都と神奈川県。63・5%が放送エリア外で再生された。クーポンを使って商品を購入した地域も、宮城県だけでなく、東京やほかの地域に広がっていた。

 阿部部長は「われわれローカル局は宮城県の県民に対し、情報を発信している。例えば、宮城県のPRを県民に一生懸命しても『そんなの知っているよ』になってしまう。であれば、全国に発信して、かつそれが購買につながるのであれば非常に有意義な実験だったし、次につながるかなと期待している」と実験の意義を話す。

権利、コンテンツ数という課題

 ただ、実験ではなく、実際に同時配信を事業として行うには課題もある。一つは番組で使用する音楽や提供映像、出演者の権利問題だ。現在は法律上、放送と配信では別に使用許可を得る必要があり、キー局に比べてローカル局には人数的に限界があるからだ。

 もう一つは、視聴者の興味をひくコンテンツをどれだけそろえられるかという点だ。テレビ放送ではキー局と系列の地方局の番組が組み合わされ、編成が行われているが、配信分野では放送と同じようなネットワークはない。阿部部長も「ローカル局はキー局の番組の比率が大きく、自社番組の割合が少ないので、同時配信というカテゴリーに持っていくためには、時間を埋める工夫をしないといけない」と話す。

開始1年で25万DL

 すでに、複数のローカル局が協力して配信事業を行っている地域もある。

 愛知県の東海テレビ、中京テレビ、CBCテレビ、テレビ愛知の4局のコンテンツを集約した動画・情報サービス「Locipo(ロキポ)」は27日、開始から1年を迎えた。パソコンで見られるほか、スマートフォンのアプリで利用することもでき、ダウンロード数は今年1月時点で約25万件に達している。

 在名古屋の4局が配信分野で連携する理由としても、力を合わせることでコンテンツ力を向上させるという目的がある。サービスに参加している中京テレビの担当者は、「(配信では)ライバル意識よりも協力しようという意識」と話す。

 ロキポでは放送されたテレビ番組の見逃し配信のほか、オリジナルコンテンツも見られる。気軽にアクセスできるよう各局の集めた情報を文章化した「読みもの」や、スマホのアプリでは番組で紹介した店やイベントの情報にアクセスできる「どこ行く?」など新機能を追加。ユーザーの取り込みを図る。

厳しさ増す環境

 テレビ業界を取り巻く環境は厳しさを増している。電通が2月に発表した令和2年の国内総広告費は、前年比11・2%減の6兆1594億円で、テレビは11・0%減の1兆6559億円。こうした中、ネットの広告費は5・9%増の2兆2290億円に上り、成長を続けている。

 ネットを使った動画配信サービスの利用者も増加。かつては放送局が独占していたテレビ画面を配信事業者と奪い合うという現象も起きている。こうした状況で、テレビ放送事業者のネットへのシフトは強まらざるを得ず、地方局もその例外ではない。

 2月の宮城県での同時配信実験に協力した「LivePark」の安藤聖泰(きよやす)社長は、地方局が同時配信に取り組む際の課題として、「地方テレビ局の番組をそのまま全国で出してビジネス的にいけるかというと、まだまだ課題はあると思う。地元を大事にしつつ、全国を意識していくという番組作りをしていかないといけないのではないか」と指摘した。(文化部 森本昌彦)