その人工知能は人間らしさを学ぶために、あえて「間違い」もするようにつくられた

サドラーは、Maiaならチェスの練習に役立つとしたうえで、特定のプレイヤーの指し手を模倣するチェスプログラムのアイデアについてしばらく前から専門家の話し合いが続いているのだと言う。Maiaは十分な数の棋譜を学べば、特定のプレイヤーの指し手のみを予測するように訓練できるようだ。

「あなたが世界チェス選手権でマグヌス・カールセンと対戦するために準備しているところを想像してみてください」と、現在の世界チャンピオンを例に挙げてサドラーは説明する。「あなたにはマグヌスとまったく同じようにプレイするエンジンがあるわけですから」

これはチェス以外にも当てはまるだろう。eスポーツのトップスターの真似をするように訓練されたAIプレイヤーを相手に、ビデオゲームで対戦しているところを想像してみよう。ゲーム以外でも、人間の行動を理解しているAIプログラムは、企業が交渉で相手の機先を制する場合やソフトウェアのプログラムをつくる場合に役立ち、人間の同僚が何をしようとしているかをロボットが理解する際の助けにもなる。

「このアプローチなら、どのくらいうまく人間の行動を予測できるだろうか--そんなMaiaからの問いかけは興味深いものです」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)の准教授で人間と機械の相互作用と協働を研究しているジュリー・シャーは言う。シャーはMaiaのアプローチの技術的側面は検証が必要だとしながらも、人間と機械がチェスで協働する特別なやり方を生み出せるかどうか調査するのは興味深いはずだと指摘する。

AIがオフィスワーカーをいかに支援できるかを研究しているドイツのカッセル大学教授のマティアス・ゼルナーによると、AIにとって人間のように振る舞うことは極めて重要だが、人間にとってそのようなAIの働きを理解することはさらに重要ではないかという。というのも、システムがうまく機能しない上に機能しない原因がはっきりしないと、「そのようなAIの受け入れを実際に損ないかねません」と、ゼルナーは指摘する。

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