その人工知能は人間らしさを学ぶために、あえて「間違い」もするようにつくられた

MaiaはAIプログラム「Leela Zero」で用いられたコードを使って開発された。Leela Zeroは、アルファベット傘下のDeepMindが開発した囲碁や将棋、チェスまで自己学習できるAIプログラム「Alpha Zero」のオープンソース版のクローンである。

Alpha Zeroは、人間による指導なしにチェスを巧みにプレイする方法を学習したことで、従来型のチェスプログラムの殻を破ったAIだ。Alpha Zeroのプログラムには、インプットに反応できるように調整された仮想ニューロンからなる人工ニューラルネットワークが含まれている。

チェスをAlpha Zeroが学習する際には、盤上の位置と対戦中に生じる駒の動きに関するデータを与えられ、勝てる指し回しをニューロンに選ばせるように調整する強化学習の方法をとる。チェッカーや囲碁といったほかのボードゲームのやり方の学習と同じ方法を、最小限の修正によって転用できる。

コーネル大学のチームはLeela Zeroのコードを修正し、人間の指し方の正確な予測を選択するよう学ばせるプログラムをつくった。1997年に当時のチェスの世界王者ゲイリー・カスパロフを破ったIBMのコンピューター「Deep Blue」など、Maia以外のチェスAIは、可能な指し手を探しながら対戦し、ゲームの先を読もうとしているようだ。しかし、Maiaは人間が最も指しそうな手をいかにして見つけるかに重点を置く点で、ほかのチェスAIとは異なる。

Maiaが学習に用いたデータはオンラインの人気チェスサーバー「LiChess」のもので、結果的により人間らしい方法でチェスをプレイできるプログラムになった。対戦相手の強さのレベルに合わせた複数のバージョンのMaiaに、LiChessから挑戦できる。

人間の行動を理解するAIが誕生する?

将来的にはより洗練されたAIが誕生し、数学から文学、さらにはその他のあらゆる分野において人間の知能を上回るかもしれない。だが、コーネル大学のクレインバーグは「AIと人間が力を合わせて作業するまでには、長い過渡期を経ることになるでしょう。そして両者の間では、コミュニケーションがとられるようになるでしょうね」と言う。

そうなるずっと前に、人間の行動を予測して模倣できるAIがチェスやその他のゲームにすぐに応用されることだろう。「それは名案ですね」と、英国人のチェスグランドマスターで、Alpha Zeroの能力に関する書籍『Game Changer』の著者でもあるマシュー・サドラーは言う。「チェスがわかるエンジンは、アマチュアのプレイヤーにとても必要とされていますから」

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