自身の得点が表示されると鍵山は、思わず立ち上がり、飛び跳ねて喜びを表現した。190・81点。SPに続いてフリーも自己ベストを大幅に更新し、初出場にして堂々の2位。「ここに来たからには、表彰台を狙って練習してきたので、努力が実った」と興奮気味に振り返った。
ネーサン・チェン(米国)のノーミス演技直後に登場しても、動揺することはなかった。「ノーミスすると分かっていた。何も考えずに演技することができた」。前半に組み込んだ3本の4回転を鮮やかに決めた。後半の2連続3回転や最後のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で着氷が乱れたが、大きなミスなく滑り終えた。
今季シニア1年目。五輪に2度出場した父の正和コーチからはシニア転向にあたり、「日本で一番を目指すというのは世界のトップを狙うということ」と説かれた。日本男子を牽引(けんいん)してきた羽生と宇野を念頭に、鍵山は「羽生選手たちに追いつけば、世界のてっぺんに追いつけると捉えている」と語っていた。
2年前の世界選手権を観客席で見つめていた少年が急成長を遂げた。早くも世界トップと肩を並べ、「自分の努力もここまで無駄じゃなかった」と満足感をかみしめた。(久保まりな)