朝晴れエッセー

祖母への手紙・3月27日

約30年前の手紙を見つけたと娘に渡された。母宛に祖母が書いたものだった。

「強制しない自立を貴女(あなた)だからこそ、我慢強く見守ることができたのでしょう。学校に行かないで自分を見つめる機会を十分にとってあげたことは、将来必ず良い結果をもたらすと信じます」

中学から学校に行けなくなった弟は、先生方のご厚意により、生徒1人だけの卒業式を開いていただいた。母がその感謝の気持ちをある新聞に投稿したことがある。

母は、弟が学校に行かないことを責めたり、怒ったり、涙をみせることはなかった。ひたすら弟の話し相手となり、突き放すことなくいつも寄り添っていた。当時まだ高額だったパソコンやロードレース用の自転車を与え、必ず自立できる日が来るから大丈夫といつも言っていた。

ただ家にいるだけの生活だったが、弟にとっては、その全てが生きる力を養う大事な時間だったということが後になってよくわかった。

回り道はしたけれど、おばあちゃんの言うとおりだったね。もう何年もIT関連の会社で頑張ってる。テレワークだと調子が出ないって。あの大変だった日々にお母さんを支え続けてくれて本当にありがとう。

娘と弟と、母の遺品整理をしながら変顔写真を見つけてはゲラゲラと笑いあった。こんな日が来るとはね。弟の携帯待ち受け画面の中のあの大事な自転車は今にも走り出しそう。

先日、娘の卒業式が行われた。おばあちゃんと天国1年生のお母さん、これからもずっと私たちを見守ってくださいね。

野口早苗 53 東京都大田区