中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区の少数民族などが直面する人権侵害の改善に向け、自民党が本腰を入れ始めた。党人権外交プロジェクトチーム(PT)は25日、党本部で日本ウイグル協会の幹部から迫害の実態を聞き取った。党幹部や閣僚経験者らも同日、中国の人権状況を非難する国会決議を各党に働きかけていく方針を確認。中国批判を展開する国際社会との連携を強める構えだ。
ウイグル協会の于田(うだ)ケリム会長は党PTの会合で「もっと圧力をかけないと助けることができない。日本の政党の皆さまには明確な活動をやってもらいたい」と訴えた。少数民族の人権活動家が正式に党本部に招かれるのは初という。
ウイグル人をめぐる人権状況は悪化している。国連は2018年時点で最大100万人が収容所に拘禁されていると報告。不妊手術の強制や施設内の虐待を訴える証言や動画も絶えない。
党PTはチベット亡命政権の代表機関、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所幹部の意見聴取も近く予定している。中国側は迫害を否定しているため、在日中国大使館の主張も聞いた上で、5月にも少数民族問題に関する政府への提言をまとめる方針だ。
人権問題を重視する米国や英国、欧州連合(EU)などは対中圧力を強めており、今月下旬には中国当局者に対し資産凍結などの制裁を発動した。ただ、日本は制裁を科すための根拠法を欠いており、他国との足並みはそろっていない。
腰が重い政府とは対照的に、国会ではウイグルやチベット、内モンゴル、香港の人々への支援法の整備などを盛り込む国会決議の採択に向けた動きが進んでいる。超党派議員連盟の「日本ウイグル国会議員連盟」や「対中政策に関する国会議連(JPAC)」などの幹部は25日、各党に働きかけて早期の決議を目指す方針を確認した。
党PT関係者は「党内の親中派の影響で行動が遅れた。国会決議を出せたとしてもスタートラインにすら立てていない」と述べ、対応の遅れを早急に取り戻す必要性を強調した。(奥原慎平)