商業施設、災害時の役割模索 宮城で被災、有明ガーデン・林将也さん - 産経ニュース

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商業施設、災害時の役割模索 宮城で被災、有明ガーデン・林将也さん

東日本大震災で被災した際の経験を話す林将也さん=江東区
東日本大震災で被災した際の経験を話す林将也さん=江東区

 大規模地震の発生時、商業施設ではどう対応したらいいか。東日本大震災発生時に宮城県名取市の商業施設で勤務し、現在は東京都江東区の大型商業施設「有明ガーデン」の運営事務所の職員として同施設の防災対策にも関わる林将也(まさや)さん(35)は、被災時に「マニュアルがあってもその通りにはいかない」ことを痛感したという。求められるのは臨機応変な行動。日頃の備えや地域とのつながりなど、商業施設だからこそできる役割を果たすべく尽力している。(鈴木美帆)

 震災10年を機に、有明ガーデンで13日に開催された震災復興イベント。林さんは、震災で被災し現在は語り部をしている南三陸ホテル観洋(宮城県南三陸町)の従業員、伊藤俊さんら3人とともにパネルディスカッションに登壇し、当時の商業施設の被災状況や、今できる防災の取り組みなどを語り合った。

 震災当日、林さんは震度6強を観測した宮城県名取市にあるイオンモール名取で勤務していた。発生時は「誰もがすぐ外に逃げ出さなければと走り出す状況だった」と振り返る。

 「日頃の避難訓練は施設の外への誘導まで」だったことから、その先の対応に苦慮した。館内へ戻りたい、自転車を貸してほしい-。被災した人々からさまざまな要請があったことで現場は混乱。停電でシャッターが動かなくなり、被害が出た館内への立ち入りを防ぐために建物を手動で封鎖、職員との連絡はホワイトボードに記すことで対応した。

 翌日以降は食料や日用品の販売を再開したほか、映画館での無料上映やトークイベントなどを実施し、被災者を元気づけた。そこで被災者が浮かべた笑顔を見て、販売だけではない「にぎわい作り」という商業施設の役割を実感した。

 また、地域との交流から物資の助け合いが生まれたことで「人と人とのつながりや対策の共有が大切」だということもよくわかった。一方で、避難所や危険な場所など自分の身を守るための情報は、自ら知っておかなければならないことも認識した。大事なのは、「自助共助」の両面で、日頃から備えておくことだという。

 林さんはその後、イオンモールを退職。転職先で携わることになった有明ガーデンで、被災経験を積極的に発信し、防災対策に生かしている。避難訓練を月1回行っているほか、防災対策は毎週確認。震災時に要望の大きかった簡易トイレや生理用品などの備蓄品の充実をはかり、被災時は安全確保のため職員は2人1組での行動を義務付ける、といったルール作りも率先している。館内約200店舗との物資などの協力体制や、啓発活動もより深めている。

 今回のイベントについては「防災を考えるきっかけ作りになってもらえれば」と林さん。周辺には大規模施設が多く、災害時には帰宅困難者も予想される。「地域に寄り添い、防災拠点の役割も果たしたい」。自らの経験を、さらに今後の防災に生かすつもりだ。