鑑賞眼

ミュージカル「アリージャンス~忠誠~」 分断の先にある希望

【鑑賞眼】ミュージカル「アリージャンス~忠誠~」 分断の先にある希望
【鑑賞眼】ミュージカル「アリージャンス~忠誠~」 分断の先にある希望
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 SF特撮映画「宇宙大作戦」のカトー役で知られる日系米国人俳優、ジョージ・タケイの体験をもとに作られた2012年初演のミュージカルが日本初上演となった。この作品で初めて、強制収容された戦時下の日系人の問題を知った米国人も多かったという。その後に誕生したトランプ政権、そして新型コロナで、個人の考えの違いが大きな分断を生むことを私たちは思い知らされた。そんな今だからこそ、見る価値がある。

 真珠湾攻撃が起き、アメリカ人として生きていた日系人は強制収容所に入れられることになる。その数、11万人。カリフォルニア州サリナスで暮らしていた日系2世のケイ(濱田めぐみ)と弟のサミー(海宝直人)も、父タツオ(渡辺徹)、祖父カイト(上條恒彦)とともに収容される。同様に敵国だったドイツやイタリアの移民は、収容所に送られることはなかったのに。

 ひどい扱いを受けながらも、彼らは愛する家族と心をひとつに生きていこうとする。しかし、米国への「忠誠」を問うアンケートをきっかけに、「軍隊に入り、手柄を立てて家族を解放したい」と考えるサミーと、「戦地に出たら日系人は捨て駒にされる。家族のため、収容所の劣悪な環境を改善する活動をしよう」と考えるケイに溝が生まれる。

 四半世紀前、劇団四季のヒロインと子役として共演した濱田と海宝は、本物のきょうだいのよう。それだけに、家族ゆえの遠慮のない言葉できょうだいの絆が断絶する場面は、涙なくして見られない。屈指の歌唱力と表現力を持つふたりだけに、どのナンバーも安心して聞ける。海宝は冒頭の「嵐とは闘うな」で内に秘めた覚悟をちらりとのぞかせ、自分の道を決める「男は」で青い正義感を爆発させる。難しいメロディーと歌詞でありながら、観客にしっかりと思いを伝える技術はさすがだ。