克行議員初の被告人質問

(7完)「『厳しい選挙』政治家の常套句」

被告人質問に臨む河井克行被告(イラストと構成・勝山展年)
被告人質問に臨む河井克行被告(イラストと構成・勝山展年)

 《令和元年7月の参院選広島選挙区をめぐる買収事件で、公選法違反の罪に問われた元法相の衆院議員、河井克行被告(58)の公判は被告人質問が続いている》

 《2議席を有する参院広島選挙区では、自民党は議席独占を目指し、妻の案里前参院議員と、溝手顕正参院議員の2人を公認したが、党内の亀裂は深まっていた。現職の溝手氏に対し、国政初挑戦の案里氏は当選すら難しいとの見方があった》

 弁護人「選挙の情勢をみて、被告人は案里さんに勝算があると考えていたのか」

 克行被告「私は河井案里は当選するだろうと思っていました」

 弁護人「公認が2人いれば、票が割れ、新人にとっては不利という見方ができる。実際、証言からそういう言葉も出てきているが」

 《克行被告は、有権者の心理から、女性候補で新人の案里氏が有利だったとする持論を展開。不利と見るのは「選挙の表面だけを見ている」と指弾した》

 克行被告「こういうことになって申し訳ないですけど、案里の清廉潔白なイメージが(有権者に)評価してもらえると思いました」

 弁護人「証言の中で、被告人がいろんな人に会う際に『厳しい選挙になる』と言っていたようだが」

 克行被告「政治家にとってそれは常套句(じょうとうく)ですね。大丈夫と思っても、大丈夫なんて言ったら油断して内部崩壊します。陣営を引き締めるためです。『克行が投開票日の数日前にすごい形相でやってきて、案里の選挙が厳しいと言った』という三矢会の役員の供述(調書)を読んで、しっかり目的が達成できたと思いました」

 《一方、自民党が4回行った選挙区の情勢を調べる世論調査では、公示前、案里氏は溝手氏と野党候補に続き3位で、当選は難しいことを示していた。克行被告はそれでも勝算があったと反論する》

 克行被告「責任政党の自民党が、当選の可能性のない新人を立てることがあると思いますか。勝算があって、立てたのだと思います」

 「調査結果では3番手だが、2位(の野党候補)の数字と遜色ない」

 《証言台の克行被告の横に弁護人と検察官が立ち、世論調査の資料を確認していく》

 克行被告「裁判長にごらんいただきたい。主要候補のなかで、一貫して上昇しているのは案里だけ」

 《裁判長は、資料を確認しながら、克行被告の説明に耳を傾ける》

 克行被告「実数より、方向性、ベクトルが重要。当たり前だが、公示日1カ月前に最高の支持率があっても仕方がない。期日前(投票)もあるが、一番の盛り上がり、頂(いただき)をもっていくのは投票日。その判断がベクトル」

 《弁護人は、資料から案里前議員、溝手顕正氏、野党候補それぞれの支持率の推移を確認していく》

 克行被告「今日示された数字が、私が案里に勝算があると踏んだ材料の1つ」

 《裁判はここで閉廷。証言台から席に戻った克行被告は真剣な表情で弁護人と話し込み、何度も小さくうなずいていた。次回の被告人質問は24日午前10時から行われる》=完

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