思ふことあり

スポーツジャーナリスト・増田明美 的外れな告げ口に対抗を

五輪マークのモニュメントと国立競技場(奥)=東京都新宿区
五輪マークのモニュメントと国立競技場(奥)=東京都新宿区

間もなく聖火リレーが始まろうとしている。そんな中、東京五輪・パラリンピックの開閉会式で、企画・演出の統括役を務めるクリエーティブディレクターの佐々木宏さんが辞任した。違和感と怒りを感じる。

問題は約1年前、演出チーム内でさまざまな企画を出し合う段階で出た一つのアイデア。それが女性タレントの容姿を侮辱したとされている。しかし、佐々木さんはその場でメンバーに注意され、謝罪し、撤回。指摘されたメンバーにお礼まで述べている。素晴らしいチームで準備を進めていたことが分かるのだ。

アイデアを出し合った内輪のやり取りを1年たった今、告げ口した人のなんと卑怯(ひきょう)なことか。加えて、「女性の容姿を侮辱」などと、事実を歪曲(わいきょく)させてセンセーショナルな見出しで伝えるメディアも情けない。

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チームで新たなコト、モノを創り上げる作業をしたことがある人なら分かると思う。質より量を重視して、集団でアイデアを出し合う方法としてブレーンストーミングやアイデアフラッシュなどいくつかの手法があるが、ポイントは自由闊達(かったつ)な意見を出し合うこと。

間違った言葉や役に立たないこともどんどん出していい。私なんか、この段階でのことを告げ口されたら命がいくつあっても足りないと思う。とにかく皆でアイデアを出して、ダメなものはチーム内で議論しながら削除していく。

今回の佐々木さんのアイデアは、チーム内で「没」にされたものだ。ビジネスの世界の手法で、没にしたアイデアの責任を取らなければいけないなら、創造力を捨てろと言っているようなものである。