朝晴れエッセー

弟子は晴天なり・3月21日

わが茶道教室に通う弟子は、80歳から9歳まで、皆達者である。

最年少の小学3年生の男児は、コロナ禍もどこ吹く風で「先生、稽古を月3回から4回にして」という。

この春、その彼が初伝をいただくことになった。5歳から通い、右と左を知るお稽古から始まった。ある茶席で、若い男性が袴姿でお点前するのに出会い、よーしと本物の帛紗(ふくさ)で切磋琢磨(せっさたくま)の日々が続いた。

精進の様子を垣間見ていた家元が、これまでに例はないが初伝を授与しましょうと。

授伝式には、「僕、先生と2人で行きたい」と、リュックに着物一式と点前用具一式、ポシェットには交通カードと携帯電話を入れて、1人でバスに乗ってJRの駅までやって来た。

茶室には、既に家元と幹部方がお座りだ。2人そろって茶室に入り挨拶をした。授伝者紹介の場面になって、ランドセルを背負って稽古に来る姿を思い出し涙がこぼれた。

披露点前では薄茶を一服たて、家元に味わっていただいた。初伝授与式では初伝書とご褒美まで頂戴した。

子供ながらに茶室の静謐(せいひつ)さに背を押されたのか、話す相手に1人ずつ体を向けて聞く所作に大人が驚いた。

重くなったリュックを背負い帰路につく。夜、お母さんから電話があった。「先生、お点前がよくできたと言っていますが本当ですか。皆さんに褒められてうれしかったようです。お茶の先生泣いていたみたい」と。まいった。

中嶋美沙子 74 東京都豊島区