農業の『未来創世記』:気候変動アクティビストのための、遺伝子とオーガニック再考

農業部門による排出量を増やさずに課題を解決できれば、人類以外の生物も地球に住み続けることができるだろう。そのために、「自然」だと思い込んでいるものに執着することをやめる必要がある。スーパーで買い物をするときだけの話ではない。結局のところ、一部の層しか購入できないような特別な食品を問題視するだけでは、地球温暖化を食い止めることはできないからだ。

わたしたちは食への意識を改革し、食糧システムが気候変動に及ぼす影響をよい方向に変えるような規制政策を支持すべきではないだろうか。個人的には、食糧システムの未来は現在の有機農業や従来型農業にあるのではなく、両方を進化させ、組み合わせていくものになるのだろうと思う。

気候変動を真剣に捉える農業関係者を探す過程で、ドン・キャメロンの名前を耳にし、彼がゼネラル・マネジャーを務めるテラノヴァ農場を訪ねた。広さ6%2C000エーカー(約24.3?)の農場は、暑く乾燥したセントラルバレー南部にある。この地域では、今世紀末までに平均気温が4~6℃上昇する見通しだという。

フリースにカウボーイブーツで現れたキャメロンが、愛車で周囲を案内してくれた。テラノヴァではピスタチオやハラペーニョなどおよそ20の作物を栽培しており、大半は従来型農法を採用している。その傍ら、950エーカー(約3.8?)相当の土地では有機作物をつくっているのだ。

クルマで農場を回りながら、通常の農地と有機農地の境界がはっきりしないことに驚いた。いくつかの作物を有機栽培しているのは、高く売れることに加え、普通の作物にも有機農業の方法論を取り入れるためだ。鶏のふんをまくと土壌にリン酸塩とカリウムを補うことができ、フクロウを飼えば農作物を荒らすホリネズミを駆除する化学薬品を使わずに済む。

キャメロンは毎日、気候変動のことを考えていると話す。農場運営のほぼすべてが影響を受けているからだ。12月だというのに、パプリカが畑に赤い彩りを添えていた。10年前には9月か10月には収穫が終わっていたという。暑くなるのが早くなったためにトマトの一部がやられてしまい、いまは熱に強い品種を探している。

 ニンジン畑に立つドン・キャメロン。農場運営のほぼすべてが気候変動の影響を受けている。キャメロンは、「秋の平均気温が上昇し、春が早くやってくるようになったんだ」と説明する。暑くなるのが早くなったためにトマトの一部がやられてしまい、いまは熱に強い品種を探している。

気候変動に耐えうる遺伝子

気候変動に対処するために役立つような新しい技術やツールはあるかと訊くと、キャメロンはまず「干ばつ耐性だね」と答えた。干ばつの悪化で周辺の地下水の水位が下がり、地下の帯水層に水を補充する灌漑システムを導入しなければならなかったという。こうすることで、近くのキングス川が洪水で氾濫したときに溢れ出た水を、ここまで運んでいる。ただ、キャメロンが本当に必要としているのは、少ない水でも育つ作物だ。品種改良の方法については、これまで通りのやり方でも遺伝子組み換えでも構わないという。

冬が深まり栽培と収穫が一段落すると、むき出しの土地が目立つようになる。そうした状況でも、あちこちにロシアアザミが生えているのを見かけた。ユーラシア原産のロシアアザミは1873年に亜麻の種子に紛れて米国に入り込み、西部全体に拡がった。キャメロンは水やりも手入れもしていないのに大きくなった緑の塊を指さしながら、「これは水がなくても育つんだ」と言う。「わたしたちが求める遺伝子をもっているのさ」