大滝詠一「A LONG VACATION」40周年 名盤はこうして誕生した

 これは川端を悩ませた。「その責任を負わないといけない」。川端は完成前に、大滝の仕事から離れた。それもあって、この40年、川端は「A LONG VACATION」は、手にとったことすらないという。

 川端の後は、歌手、太田裕美などのディレクター、白川隆三(77)が完成させた。白川は大滝を交えて販売戦略を練ったが、このときの売り上げ目標はわずか3万枚だった。

 「目標が低いといわれそうですが、大滝さんの過去の成績だとそれが最多でした。ともかく、その熱心なファンにはしっかり売ろうと」と白川は説明する。

 56年3月21日に発売されると、確かに初登場こそ70位と振るわなかった。だが、じわじわとヒットチャートをはい上がり、夏に向けてどんどん売れた。6月には4位、8月には2位にまで上り詰めた。

 白川は、カセットテープなどカーステレオ用がよく売れたと記憶している。「海に行くのに聴くと最高でしょ。まさに夏って感じ」

 ■幸せな結末

 「A LONG VACATION」は、この音楽職人を時代を代表するヒットメーカーに変身させた。大滝は、松田聖子や森進一ら歌謡曲のスターへもヒット曲を提供した。

 だが、大滝は表舞台から遠ざかる。アルバム「EACH TIME」(59年)の後は、「幸せな結末」(平成9年)、「恋するふたり」(15年)という2枚のシングルを出しただけで、25年12月に亡くなる。65歳だった。

 朝妻は「幸せな結末」がヒットした際、食事の席で大滝に「すぐにアルバム作ろう」と勧めたが、大滝の答えは「あなたは、何も分かっていない」だった。「大滝くんにしたらシングルを作るのだって大変なのに、アルバムなんて無神経な奴だと思ったのじゃないかな」

 「A LONG VACATION」の発売から40年。朝妻は、こう振り返る。「あっという間だった。でも、こうして振り返れば結構、時は流れているのだなと思いますね。そこに大滝くんがいないなんてのは、ちょっと信じられないですけどね…」

 ■40周年記念盤

 ソニー・ミュージックレーベルズは21日、「A LONG VACATION」発売40周年を記念して複数種類の商品を発売。

 新たに見つかった、状態の良いマスターテープに基づいた最新音源で本編を楽しめるほか、関連の未発表音源などがセットになった商品もある。

 注目は、大滝自身が「A LONG VACATION」ができるまでを、ラジオ番組風に語っている「Road to A LONG VACATION」という音源だ。「A LONG VACATION」が、いかにして形になったかを自ら解説している。

 この音源は、「A LONG VACATION」発売30周年の際、イベントで披露されたが、大滝の意向で40周年まで封印されていた。(敬称略)

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