朝晴れエッセー

女学生の思いやり・3月20日

電車で微笑ましい光景に出くわしました。80歳代の老人が乗車すると「おじいちゃん、どうぞ座ってください」と女学生が立ち上がりました。

「うれしいね。いつもなら私が電車に乗った途端、一斉に目をつむって知らんふりをするんです。あなたのように優しい方ばかりだと改まって優先席を設ける必要がないのですがね。お嬢さん、ありがとう」。満面に笑みを浮かべて礼をされました。

降車する際には女学生が乗客をかき分けて「すみませ~ん、降りますので開けてください」と老人を誘導した後、再び乗車しました。

新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、「集まるな」「接触するな」「話すな」の3密が徹底されている中、女学生の優しさと勇気ある振る舞いに感動する一方、私は傍観するばかりで同様の対応が取れませんでした。猛威を振るうコロナ禍で他人との接触を避けているとはいえ、相手を思いやる気持ちが欠けていたのです。

東日本大震災で混乱した際には助け合い、励まし合い、貧苦を分かち合うなど、人々は支え合って難局を乗り越えました。その行為が励みとなって被災者に勇気と希望を与えました。

コロナ禍においても同様に、いたわりと思いやりの気持ちが「絆」となってコロナ禍に立ち向かう原動力になります。

女学生の振る舞いを目にした乗客は自分のことのように幸せ顔を浮かべていました。コロナ禍で暗い世の中、久しぶりに清々しい気分になりました。

松田孝子 66 東京都足立区