近ごろ都に流行るもの

「売らない店」 無人接客も、先端商品を気軽にお試し

ガジェットから伝統工芸品まで多彩な商品が試せる。左奥の個室が「スキャンBOX」だ=東京都千代田区の「b8ta」有楽町店(重松明子撮影)
ガジェットから伝統工芸品まで多彩な商品が試せる。左奥の個室が「スキャンBOX」だ=東京都千代田区の「b8ta」有楽町店(重松明子撮影)
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コロナ禍の外出自粛で伸びる通信販売だが、購入前に性能や質感を確かめたいのが人情。そんな希望に「体験店舗」が応えてくれる。家電やガジェット(目新しい道具)を操作したり、自転車+原付のハイブリッドバイクにも試乗したりできる。気に入ったら後でネット購入する形なので「買わなくては」というプレッシャーとは無縁。販売ノルマのないスタッフの接客もサッパリしている。一方、出品するメーカー側には都心の一等地で製品をPRできるのが魅力だ。クラウドファンディングや町工場のβ(ベータ)版(試作品)など、多彩な企業が夢を抱えて参加する。(重松明子)

「イノベーティブ(革新的)な商品ほど、手に触れて体験していただかないと良さが伝わらない。オンライン(通販)購入の比重が高まるなかで、オフライン(実店舗)の役割も変わっていくべきです」

米国シリコンバレー発の体験店舗「b8ta(ベータ)」を展開するベータ・ジャパンの北川卓司代表(39)は、新業態の意義を語った。

2015年発祥のb8taが日本に上陸したのは昨年8月。東京・有楽町と新宿に店舗がある。米国の店に日本人客が多かったことやモノづくりの先端地として、ドバイ(アラブ首長国連邦)に続く3カ国目の出店となった。

有楽町店は約210平方メートル。AI(人工知能)で動く癒しロボット、手描き文字がデジタルデータに変換されるペンとノート、空気清浄機や寝具など、約70社の製品が並んでいる。接客の基本はタブレット端末だ。自由に商品説明が読め、QRコードから販売サイトにもつながる。

4、5人のスタッフが常駐しているが「いらっしゃいませ」の声かけはなく、「こんにちは」がファーストコンタクト。「お客さまの反応によって程よい距離感を判断します。ご要望に応じて直接説明もしますが、基本1人でお楽しみいただける店です」と、店舗責任者の春山智博ゼネラルマネジャー(43)。

入店時の手指消毒、触った製品のアルコール拭き、空調管理などで新型コロナウイルスの感染対策も入念に行っている。

一角にある個室「スキャンBOX」は、オーダーメードジーンズ「STAMP」の3D計測機だ。注文服というと、メジャーを体に当てる濃厚接客が当たり前だが、こちらはその対極。客が1人で入室し、下着姿になった所で全身約500万ポイントを自動計測する。「私も驚くほどピッタリなジーンズが作れました」と春山さん。

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