コロナ禍で国境超えたリモ演 ファンに寄り添う ITも普及を後押し

 通常、演奏の撮影は一人で行う。あらかじめテンポや音程を打ち合わせておいて、その通りに演奏する。コンサート会場では、同じ空間にいる目の前の演者と演奏中に呼吸を合わせることができるが、リモートでは呼吸を合わせることができない。「とくにクラシックの曲では途中でメロディーが揺れるため難しかった」(渡辺さん)という。そこで、最初の演奏に手拍子を加えて録音し、手拍子の揺れるリズムに合わせることで克服した。

 録音後の編集でも苦労した。パソコンなどで編集するのだが、撮影機材の違いにより音量の大きさが異なり、最適な編集ができずに50回以上撮り直したこともあった。自宅で行う収録では、愛犬の鳴き声が入ったりするトラブルもあったという。

 リモ演チャンネルでは、自分たちと同じような境遇にある花火師や闘病生活を続ける知人へエールを送る曲を配信した。渡辺さんは「動画投稿サイト(の双方向性)を生かし、ファンに寄り添った活動をしたい」と話す。

ITがリモート演奏支援

 プロの演奏家でも試行錯誤するリモート演奏だが、ITの最新技術が普及を後押ししている。

 ヤマハは昨年6月、インターネット回線を介して、複数のユーザー同士(最大5拠点)でリモート合奏が楽しめるサービス「SYNCROOM(シンクルーム)」のアプリを公開した。

 KDDIとKDDI総合研究所も昨年6月、新日本フィルハーモニー交響楽団と東京混声合唱団のリモート演奏によるバーチャルコンサートをアプリで配信した。仮想現実(VR)技術で、好きなパートに近づいたり遠ざかったりする視聴体験ができる。

 海外と国内の演奏家とのアンサンブルを可能にするリモート演奏は、これまで実現不可能とされる夢の競演を実現するツールとなりうる。

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