ARヘッドセットの不振で苦境のマジックリープ、新CEOが語る再生への道筋

マジックリープはいまも18年に発売された3ピースのヘッドセット「Magic Leap 1」を販売しているが、新たなハードウェアを開発中という。SAM BARNES/SPORTSFILE/GETTY IMAGES
マジックリープはいまも18年に発売された3ピースのヘッドセット「Magic Leap 1」を販売しているが、新たなハードウェアを開発中という。SAM BARNES/SPORTSFILE/GETTY IMAGES

 拡張現実(AR)技術を開発するマジックリープは、2018年にARヘッドセット「Magic Leap 1」の発売後に苦境を強いられてきた。こうしたなか新たな最高経営責任者(CEO)を迎えた同社は、新たな分野に注力して新たなハードウェアの開発に取り組んでいる。

TEXT BY STEPHEN ARMSTRONG

TRANSLATION BY YUMI MURAMATSU

WIRED(UK)

英国のインタラクティブアーティスト集団であるブラスト・セオリー(Blast Theory)が、拡張現実(AR)を導入した初期の体験型ゲームのひとつである「Desert Rain」を発表したのは1999年のことだった。プレイヤーは流れ落ちる水のカーテンに投影された91年の湾岸戦争の仮想イメージを見て、捉えどころのないミッションを達成する道を選ぶ。このゲームのミッションは、湾岸戦争がバーチャルな出来事だったと主張するフランスの思想家、ジャン・ボードリヤールから影響を受けている。

技術開発に注力するブラスト・セオリーは、それから監視技術や極右勢力の台頭に関する不気味な予言めいた作品を制作してきた。2019年には、ソーシャル・ディスタンスを無視した米国でインフルエンザが大流行した際の影響に関する作品も発表している。

だからこそ、ブラスト・セオリーの共同創設者であるマット・アダムスは、マジックリープやグーグルの「Google Glass」といった消費者向けAR技術のつまずきに関する近年の問題に際して、鋭い予測を投げかける。「ARや仮想現実(VR)がうまくいっていない本質的な原因は、使われる場面が誤解されている点にあります」と、アダムスは論じる。

「この技術は全般的にリビングルームでの利用が想定されています。でも普通なら、リビングルームでヘッドフォンを装着して外部との接触を断つことはしませんよね。昔ながらのビデオゲームというものは、座って互いがプレイする様子を見るものでした。ARやVRも、解像度やレイテンシー(遅延)、コンテンツという面でまだあまり優れておらず、『その環境でどのようなエクスペリエンスが必要か』という問いにまだ答えられていません。しかし、こうした問題はやがて解決されるでしょう。致命的に解決不可能というわけではないのです。例えばARを使って、鉱山の地下で働く労働者向けに災害発生時の訓練をするシステムを見たことがあります。こうしたアイデアはとても実用的だと思います」

法人需要という新たな希望

このような訓練や法人向けの需要への転換は、マジックリープにとって新たな希望だ。同社は2010年にカリスマ的な最高経営責任者(CEO)のロニー・アボビッツが創業し、グーグルやアリババ、フィデリティ、アンドリーセン・ホロウィッツといった投資家から35億ドル(約3%2C730億円)近い資金を調達した。

会員限定記事会員サービス詳細