ARヘッドセットの不振で苦境のマジックリープ、新CEOが語る再生への道筋

調査会社のPitchBookによると、マジックリープは一時は評価額が64億ドル(約6%2C820億円)にまで成長した。ところが、満を持して発売されたヘッドセットは、期待ほど売れなかったのである。

こうしてマジックリープは19年12月、法人向けの販売戦略を開始した。20年4月には大規模な人員削減を発表し、アボビッツは7月末にCEOを退任している。翌8月には新たにペギー・ジョンソン(58)をCEOに迎え入れた。

ジョンソンはこれまでマイクロソフトで事業開発を手がけ、外部パートナーとの関係を仲介し、16年のLinkedInの買収などを先導してきた人物である。マジックリープでのジョンソンの役割は、新たな方向へと進む同社を統括することだ。しかし、時が来たら消費者向け製品に立ち返るという計画を温めることも役割なのだと、ジョンソンは語る。

「わたしはロニーのことを知っていましたから、マジックリープのことは外部から非常によく把握できていました」と、ジョンソンは説明する。「CEOに就任する2年ほど前、ロニーはフロリダにある工場にわたしを招いてくれて、そこでわたしは技術に感銘を受けました。CEOに就任してわかったことは、この会社は力強いままであるということです。技術は想像以上に優れていて、工場内でおこなわれていたことは素晴らしいものでした。何か必要なものがあればつくってしまう--そんなことが繰り返される様子に、わたしは強く心を揺さぶられたのです」

「最大の問題は、もっと焦点を絞る必要があるということでした」と、ジョンソンは指摘する。「ほかの初期段階の技術でもそうですが、ある技術がどの分野でいちばん早く、最も受け入れられるのかといったことはわからないのです。携帯電話が広く普及する前、図らずも一般消費者より先に企業内で使われ始めたときと、似たようなことが起きるかもしれません」

医療や国防などに注力

ジョンソンは14年にマイクロソフトに入社する前は、クアルコムに24年にわたって勤めていた。また、資産運用大手のブラックロックでは経営陣に加わり、16年にはクラウドコンピューティングと人工知能(AI)のスタートアップに投資するマイクロソフトのベンチャーキャピタル「M12」を設立した。

ジョンソンは直近のマジックリープの戦略として、医療や国防、通信分野に取り組む考えをもっている。このうち医療分野については、「コロナ禍でやや過熱気味かもしれない」とみており、国防分野においては「暗視用にヘッドアップディスプレイを使う発想はすでにあり、この分野への進出は自然な流れ」だという。

マジックリープはこうした取り組みを「空間コンピューティング」の一環であると言いたいのかもしれないが、ジョンソンはそれでもARについて話すのが好きだ。

「こうした分野で問題解決に取り組む企業のなかには、ARにあまり詳しくないところもあります。わたしたちはこうした企業とともに問題に取り組み、解決策を考えるのです」と、ジョンソンは説明する。「このように、人々がどのような課題を解決しようとしているのかを理解することが、わたしたちが特に注力していることなのです」

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