伊方原発の運転容認 二転三転する司法判断 仮処分の審理にそぐわぬ

 四国電力伊方(いかた)原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じた昨年1月の広島高裁の仮処分決定を不服とした四国電の申し立てによる異議審で、広島高裁(横溝邦彦裁判長)は18日、異議を認め運転を容認する決定を出した。

 伊方原発3号機の運転差し止めの仮処分をめぐっては、3年あまりで司法判断が二転三転している。広島高裁では今回を含め、運転を認めたのが2回、差し止めとしたのが2回。「世界最高水準の基準」ともいわれる新規制基準に適合した原発が裁判所の判断に翻弄されるという、「司法リスク」が繰り返されている。

 伊方3号機ではまず、広島市の住民らが申し立てた仮処分がある。平成29年3月に広島地裁が差し止めを認めなかった。だが、即時抗告審で広島高裁は同年12月、熊本県・阿蘇山から約130キロという設置場所について「噴火した際の火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断、運転を差し止める決定をした。東京電力福島第1原発事故後、原発の運転を禁じる高裁レベルでの初めての司法判断だった。しかし30年9月、四電側の異議申し立てによる異議審で同高裁の別の裁判長が運転差し止めを取り消し、伊方3号機は再稼働を果たした。

 山口県の住民が申し立てた仮処分でも同様の経緯をたどる。令和2年1月、即時抗告審で同高裁は1審判断を覆し、運転差し止めの決定を出した。決定を出した裁判長は、原発の沖合600メートルに活断層が存在する可能性について四電側の調査が不十分であり、阿蘇山の火山リスクについても想定が過小だと結論づけた。

 こうした判断が「仮処分」という司法手続きで繰り返されていることも見逃せない。

 正式な裁判の結論を待たずに暫定的な措置を行う仮処分は制度の性質上、迅速な審理が求められる。証人尋問は通常行われず、原則として審査対象は書面のみ。正式裁判に比べて証拠調べは精密ではない。元東京高裁判事で中央大法科大学院の升田純教授(民事法)は「仮処分申し立てでは『一応確実』といえるレベルの疎明(証拠の提出など)ができればよいため、原告側にとって有利な決定が出やすい」と説明する。

 仮処分申し立てが原発運転差し止めの「有効な手段」として利用されているならば、好ましいことではない。升田教授も「政治的にも科学的にも高度で複雑な原発の問題は仮処分の審理にそぐわない。別の手続きの場で取り扱うべきだ」と指摘する。(岡嶋大城)