隠れクラスター「後ろ向き」調査 誰から感染、行動履歴で遡り 発症前2週間対象

 新型コロナウイルスの感染防止対策の今後の柱の一つとして、見えない感染源やクラスター(感染者集団)をあぶり出す感染者の「後ろ向き」調査が注目されている。濃厚接触者を特定する従来の「前向き」調査と違い、調査対象期間が長い上、行動履歴の聞き取りも難しい。調査の強化はなかなか進んでおらず、現場では体制の拡充を進める動きも始まっている。(荒船清太)

 「後ろ向き」調査は積極的疫学調査の一つで「深掘り調査」とも呼ばれる。西村康稔経済再生担当相も17日の会見で強化策を自治体と協議中と明らかにした。

 感染者が発生すると、保健所は感染後の行動履歴を確認し、感染者が誰に感染させたか、濃厚接触者を調べる。これが前向き調査だが、それと並行し、その感染者の感染前の行動履歴を調べ、感染者が誰から感染したかを遡(さかのぼ)る調査も行う。これが後ろ向き調査だ。

 宣言下の4都県では経路不明の感染が5割近くを占めており、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長も15日に「見えない感染源がある」と言及。後ろ向き調査は、この見えない感染源やそこから広がる見えないクラスターの特定が期待される。

 宣言直後に比べて感染者数が落ち着いてきた今、専門家は前向き調査に割いていた労力を後ろ向き調査に振り向けるべきだとしている。

 ただ、後ろ向き調査は困難も伴う。

 前向き調査は発症2日前から入院・療養までの数日間が対象だが、後ろ向き調査は潜伏期間も考慮し、発症前2週間(重点は発症前1週間)が対象だ。

 都の担当者は「2週間前は何を食べたかすら思い出してもらうのが難しい。食中毒などと違い、本人がリスクのある行動を取った自覚がなく、聞き取った履歴に本来なら重要な履歴が抜け落ちていることもある」と指摘。後ろ向き調査で感染源が判明した例はほとんどないと打ち明ける。

 都は積極的疫学調査を拡充するため、9月時点で8人だった「トレーサー(追跡)班」を60人以上に拡充。100人体制を目指し、保健師らに広く募集をかけている。都関係者は「3密(密集、密接、密閉)以外にも隠れたリスク要因があるかもしれない。ビッグデータを活用し、そうした要因を明らかにするなど、従来と違う調査も必要だ」としている。