朝晴れエッセー

卒業する生徒たちへ・3月18日

中学3年生を受けもつと、3月の卒業を前に生徒にどんな言葉をかけようかと考える。今までともに過ごしてきた日々を振り返る中で、ある講演で聞いた言葉を思い出した。

「目標とは、山登りでいうと山頂を目指して登ること。夢とは、山頂から見る景色である」。聞いたときは、しっくりとこなかった。でも1人の生徒との出会いで、この言葉の意味を実感することとなった。

顧問をしていた陸上競技部の生徒。彼女は、小学生のときに、不慮の事故で父親を亡くしていた。そんな悲しみを見せずにひたむきに競技に取り組む姿と、どの試合でも応援に来てくれる彼女の母親の姿を見て、私の中に目標と夢ができた。

「目標は、全国大会の表彰台に彼女を乗せること。夢は、母親と天国の父親にその姿を見せること」

夏の全国大会では涙したが、冬の室内陸上で3位入賞。表彰台から笑顔を見せる彼女を、遺影をもった母親と泣きながら見守った。

表彰台という努力が積み重なった目標。そして、目標の達成によって彼女と母親が生きていく支えになってほしいという夢を、私は叶えることができた。

夢とは、自分のためではなく、周りのために一生懸命になろうと思ったときに見えてくるもので、叶っても、もし叶わなくても、かけがえのないものを自分に残してくれるものだと感じた。

まもなく卒業する今の教え子たちには、こんな話をしたいと思う。

「誰かのために、一生懸命に夢を追い求められる大人になってください。卒業おめでとう」

中津川麻美 36 浜松市南区