裁判にも影響「後知恵バイアス」…無意識に記憶が変わる

 ただ、事故前に撮影された川の写真は評価が分かれるものだった。事故前に現場にいた関係者は写真を見て、「水は濁っていた」と証言。しかし本当に川が濁っていたのかどうか、写真だけで断定できる要素はなかった。

 「鉄砲水が起きたことを知っているため、濁っているように感じているのではないか」と考えた弁護側は平成27年、認知心理学を専門とする山教授に証言を依頼した。

東洋人に顕著な傾向?

 「後知恵」の存在は、記憶やものの見え方にどの程度の影響が出るのか。山教授は学生114人を対象にいくつかの実験を行い、影響を調べた。

 ある実験では学生を2つのグループに分け、河川の写真を提示。水の濁りが鉄砲水の予兆であることをあらかじめ伝え、濁りの程度を7段階で評価するよう求めた。ただ、片方のグループには「実際に鉄砲水が起きた川」として写真を見せた一方で、もう片方には鉄砲水の情報を与えず、評価をどう左右するかを検証した。

 平均値を比較したところ、鉄砲水の発生という「結果」を事前に知らされたグループの方が、より強く濁りを評価する傾向が出た。条件を変えた別の実験でも同様のデータが得られ、「同じ写真でも、結果を知ることで濁りが強く見える。典型的な後知恵バイアスだった」(山教授)。

 研究成果は今年2月、国際学術誌に掲載された。山教授によると、物事の考え方や文化の違いにより、西洋人より東洋人の方が後知恵バイアスが起きやすいというデータもあるらしい。山教授は「後知恵により、記憶だけでなく、ものの見え方や感じ方も変わるということを知っておくべきだ」と訴えた。