裁判にも影響「後知恵バイアス」…無意識に記憶が変わる

裁判にも影響「後知恵バイアス」…無意識に記憶が変わる
裁判にも影響「後知恵バイアス」…無意識に記憶が変わる
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 言われてみればそんな気がする-。誰しもがそんなことを感じた経験があるだろう。人間は後から結果や知識を与えられると、知覚や記憶を無意識に変化させてしまうことがある。「後知恵バイアス」と呼ばれる現象だ。実際にあった刑事裁判に絡み、大阪市立大の研究グループはバイアスの影響を実証。誘導尋問などにつながるリスクも想定され、グループは「人間は記憶を書き換えてしまうことがあることを知っておくべきだ」とする。(鈴木俊輔)

異なる見え方

 目の前にあるのは空や雲が写った1枚の写真。「昨日、あなたがいた場所の写真だ」と説明した上で、雲の色を尋ねる。すると同じ写真でも、昨日、雨が降った場所にいた人は「灰色」と答え、晴れていた場所にいた人は「白」と答える-。

 大阪市立大の山祐嗣教授(認知心理学)によると、これが後知恵バイアスの一つだ。結果や知識を得ることで、無意識に過去の記憶を書き換えたり、知覚を修正してしまったりする現象を指す。この例では、雨が降った経験の有無から、同じ写真でもそれぞれが雲の色の見え方を無意識に修正していることが分かる。

 山教授は「日常生活でも頻繁に起きる」とも指摘する。たとえばスポーツや選挙で自身の予想と異なる結果が出た際、「予想は外れたけど、こうなる可能性があることも分かっていた」と感じたことはないだろうか。強がりや負け惜しみではない。無意識にこう思ってしまうのも後知恵バイアスの典型といえる。

川は濁っていたのか

 後知恵バイアスは、事件や裁判にも影響を与えることがあるという。

 ある川で起きた鉄砲水による水難事故をめぐる刑事裁判。当事者が発生の予兆である川の濁りを事前に認識し、事故を回避できたかどうかが争点だった。