「魂の殺人」に時効の壁 海外では被害認識まで猶予期間も

時効停止の国も

 性暴力事件をめぐっては平成31年3月にも、全国の地裁で4件の無罪判決が相次いだ。抵抗が著しく困難な「抵抗不能」状態かどうかなどが争われ、4件のうち控訴された3件はいずれも逆転有罪判決が言い渡されている。

 一方で、公訴時効を過ぎるとそもそも事件化できなくなるため、性犯罪の時効撤廃を望む声も高まっている。法務省が設置した性犯罪をめぐる刑法の見直しについて議論する検討会でも議題に上っている。

 子供の頃の性被害は被害者が被害認識を持つのが難しく、訴えるまでに時間がかかるケースが多い。性犯罪の時効がない英国や成人になるまで時効が進行しない仏、独など海外では被害を認識するまで猶予期間がある。検討会委員で性暴力問題に取り組む上谷さくら弁護士は「海外では未成年者が被害者の場合、成人するまで時効を停止する国もあり、日本でも案は出ている」とする。

 性犯罪は当事者間の出来事の上、長期間年数がたつと唾液や体液など証拠が残りにくいというのも立件を難しくしている。今回検察側が立証の柱としたのは11年前の女性の日記の記載だった。

 上谷弁護士は「警察が発生から長年経過した数年前の性犯罪を捜査できるか、被害者の記憶が変容していないかなど難しい部分もある」と指摘。その上で、「DNAなどの客観証拠が現存している事件については立件を期待できる」と話す。

 被害を訴えた女性は「医師や弁護士、検事のおかげで裁判までできたが、こんな苦しい思いをしながら生きたくなかった。時間を返してほしい。普通の人でいたかった」と打ち明け、「長年、被害を受けてようやく訴えたとしても、時効を理由に罪に問えないのはおかしい。性暴力の時効を一日でも早く撤廃してほしい」と訴える。(大渡美咲)

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