〈独自〉多重人身事故で書類送検の男、持病の薬飲まずに車を運転

 JR大阪駅(大阪市北区)前で昨年10月、乗用車が走行中のタクシーに相次いで衝突して4人が重軽傷を負う事故があり、大阪府警曽根崎署が、車を運転していた同市内に住む40代の男について、統合失調症の薬を飲まずに車を運転していたとして自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検したことが15日、分かった。統合失調症の薬を服用せずに事故を起こしたとして、同容疑が適用されるのは珍しい。

 書類送検容疑は昨年10月15日午後9時45分ごろ、大阪市北区大深町の国道176号で、正常な運転ができない状態で乗用車を運転。走行中のタクシーに衝突して5台のタクシーを巻き込み、運転手ら4人に重軽傷を負わせたとしている。書類送検は1月18日付。

 捜査関係者によると、男は府警の調べに「パニックになって事故の状況を覚えていない」と説明しており、意識障害が起きたとみられる。また「自分の病気は治ったと思っていた」と供述したが、治ったという診断を受けたことはなかった。

 同法は、統合失調症の影響により正常な運転が困難な状態で、人を死傷させた場合は危険運転致死傷にあたると規定している。男はかかりつけの病院にも約4年前から通院しておらず薬を服用していなかった上、事故直前には統合失調症に起因するとみられる言動が顕著となっていたことも判明。これらの状況から、同署は、男が事故時に統合失調症の影響があったと判断した。

持病が原因で重大交通事故に

 運転手の持病が原因で起きる事故は後を絶たない。患者が運転する場合、持病のリスクがどのようなものか把握する必要がある。

 持病に起因する事故をめぐっては、平成27年8月にはJR池袋駅(東京)近くで、てんかんの発作により意識障害に陥った男が乗用車を暴走させ、歩行者5人が死傷する事故が発生。30年1月には東京都中野区で男が睡眠障害による居眠り運転で、男性に重傷を負わせる事故を起こしている。

 統合失調症も幻覚や妄想といった症状があり、薬を服用せずに車を運転すれば事故を引き起こす可能性は考えられる。これらの疾患はいずれも、運転に支障を及ぼすおそれのある病気として、道路交通法に基づき、症状によって運転免許証が取得できないことがあったり、一定期間取り消されたりすることがある。

 近畿大の白川治教授(精神医学)によると、統合失調症の患者は自身の症状を十分把握できていない場合もあり、「症状がおさまっていないにもかかわらず、治ったという本人の思いで薬の服用や継続中の治療を突然やめてしまうことがある」と説明する。

 事故を防ぐには患者の家族が、症状を正確に把握することが重要だ。今回書類送検された男は、事故直前に統合失調症に起因するとみられる言動が顕著となっていたが、家族は「新型コロナウイルスの影響で神経質になっているのだろう」と思い込んでいたという。

 交通事故を専門としている加茂隆康弁護士は「まずは症状のある患者本人や家族に危険運転になる危うさを認識してもらうことが重要だ」とした上で、「警察庁や自治体などの行政機関が、持病がある人の危険運転に対する啓発や対策をさらに強めていく必要がある」と話した。(宇山友明)