クラブハウス人気 ラジオにも影響大の音声SNS競争

クラブハウス人気 ラジオにも影響大の音声SNS競争
クラブハウス人気 ラジオにも影響大の音声SNS競争
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 今年に入って、音声のSNS(会員制交流サイト)アプリ、Clubhouse(クラブハウス)が一躍注目を集めた。利用者が、スマートフォンなどを使って話したいことを自由に発信できる仕組みで、おしゃべりを他者に聞いてもらうそのスタイルが「簡易版ラジオ」に例えられることもある。今、クラブハウスをはじめとした音声を活用した新しいメディアが次々と勢力を伸ばしている。ラジオ局はライバル的なその存在を、どのように捉えているのだろうか。

(藤原由梨)

仕事でも趣味でも

 「ラジオでは、不特定多数のリスナーに向けて発信するので中立性の担保などをより心にとめて話す。一方で、クラブハウスは聴き手が表示されるので、安心感があり、家のリビングや居酒屋でくつろぎながら話す感じがある」

 約40年間ラジオ業界に身を置き、現在はラジオ大阪の朝の番組「ハッピー・プラス」でパーソナリティーを務める若宮テイ子さんは、今年2月からクラブハウスを活用した発信を始めた。

 クラブハウスはiPhone(アイフォーン)などアップル社製品向けのアプリで、利用者は画面から「ルーム」と呼ばれる話のテーマを選んで参加し、それぞれおしゃべりしたり、音楽を流すなど、音声を使ったやり取りができる。

 「情報を伝えるための安定性はラジオに勝ることはない。今は無料だが、広告がつくようなメディアになればラジオの脅威になる」としながら若宮さんは、クラブハウスを使って、4月から同局で始まる新番組の告知や、意見の募集をしようと計画している。「ラジオを知ってもらうツールにもなる。共存共栄が必要だ」と話す。

「人肌」のぬくもり

 昨春から米国で利用が始まったクラブハウスに注目が集まった理由の1つには、新型コロナウイルス感染拡大下での、人々の暮らしの変化があるという。

 京都精華大の吉川昌孝教授(メディア論)は「コロナ禍で我慢せざるを得なくなった『人肌』のコミュニケーションが、音声のやり取りを通じて生まれた」と指摘する。

 1月から使い始めているPR会社勤務のビンセント結弓さん(43)=神戸市=は「これまでつながりのなかった人と意見交換のような場にもなるし、友人とただおしゃべりをするだけの使い方もできる。ビジネス面でも情報発信に使える可能性がある」と、新しい音声メディアを注視している。仕事柄、ラジオ局とのつながりも深いが、「ラジオ番組は制作者の意図や制限があるが、クラブハウスはDJが本当に自分の好きな曲を好きに流している。そこにも驚いた」と話す。

 近年、音声のメディアは種類の幅を広げている。例えば、日本発の音声メディア「Voicy(ボイシー、東京都)」は、選ばれたパーソナリティー500人以上が音声番組をネット配信している。昨年末には月間利用者が100万人に達し、今年2月にはサービス全体の月間聴取時間が100万時間を突破した。

 音声コンテンツを配信する「ポッドキャスト」も米国で日常的に使う人が1億人を超える人気となっている。

試されるコンテンツ力

 こういった新興勢力の攻勢を、ラジオ界はどう受け止めているのか。

 「今、音声コンテンツの市場が熱い。後に振り返ったとき、コロナ禍の中、大きなムーブメントで新たな仕組みが普及したと振り返られる可能性がある」

 関西の放送関係者の一人はクラブハウスなどの人気ぶりをこう捉えている。

 従来のラジオでは、DJらの話す側と、リスナーたちの聞く側に主従のような関係があったが、クラブハウスは話者と聞き手に主従関係が薄いといい、これまでの音声メディアとの相違点も強く感じている。

 音声配信アプリなどのサービスはラジオにとって「脅威の存在」とも話す。有名タレントが集まって話し出せばリスナーの人気が集まるのは当然。「局が淘汰(とうた)されるきっかけになるかもしれない」

 ただ、打開策はある。ラジオ局が長年培ってきたコンテンツ力が今こそ試されるはずだ。

 「クラブハウスでタレントや事務所がルームを始める前にラジオ局側から新しい企画を提案すること。始めてしまえば、他のメディアが追随しにくくなる。後追いになれば、先行者に追いつけなくなる」

 音声メディアの競争激化は、ラジオだけでなく、SNSも参入しての熾烈(しれつ)な競争の時代を迎えている。