首都圏で再延長された新型コロナウイルスの緊急事態宣言は期限まで14日で残り1週間。菅義偉首相が再延長を表明した際は、東京都の小池百合子知事が独断で政府への再延長要請を取りまとめようとし、首相に近い神奈川県の黒岩祐治知事、千葉県の森田健作知事に阻止された。だが、森田氏は21日投開票の同県知事選に出馬しておらず、知事選の結果次第では4知事の構図に変化が生じ、小池氏が勢いを取り戻すとの見方がくすぶる。
「本当は幹事長と面会した後に『延長してほしい』って言おうと思っていたけど、首相に先に言われちゃって…」。5日午後の自民党本部幹事長室。二階俊博幹事長と向き合った小池氏は、ため息交じりに本音を漏らした。
小池氏は2日に二階氏との面会を申し入れていた。与党最大の実力者の言質をとって延長要請を首相に迫る腹積もりだったようだが、同日は日程が合わなかった。小池氏の言葉を聞き、二階氏を利用しようとする思惑に気付いた党幹部は「危ないところだった。油断も隙もない」と話す。
再延長をめぐっては、小池氏は2日に1都3県で西村康稔経済再生担当相に延長要請する算段だった。しかし、黒岩、森田両氏らが連絡を取り合ったことで、小池氏が「他の知事も賛成している」と事実と異なる説明をしていたことが発覚した。一方、森田氏は首相に「早めに延長の考えを表明したほうがいい」と進言。首相は3日、小池氏の機先を制する形で延長方針を表明した。
だが、森田氏は千葉県知事を退くことが決まっている。新たな知事が小池氏と連携を取れば、黒岩氏は1都3県で孤立しかねない。小池氏は再延長をめぐる自身の対応について「普通のやり方を進めていた」と開き直っており、新型コロナの感染状況が悪化すれば、小池氏が再び政府に圧力を加え、「主導権」を握る可能性もある。(大島悠亮)