ベルリン国際映画祭が評価した濱口竜介監督 海外で実績、野心的作品作り 

ベルリン国際映画祭が評価した濱口竜介監督 海外で実績、野心的作品作り 
ベルリン国際映画祭が評価した濱口竜介監督 海外で実績、野心的作品作り 
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 世界三大映画祭の一つ「ベルリン国際映画祭」のコンペティション部門で今月5日、濱口竜介監督(42)の「偶然と想像」が銀熊賞(審査員グランプリ賞)を受賞した。濱口監督はデビュー直後から海外の映画祭を中心に実績を積み重ね、世界の映画界から次代を担う日本人監督として注目されてきた。(水沼啓子)

 濱口監督は川崎市生まれ。東京大在学中に映画研究会に入り、映画にのめり込む。卒論のテーマに米映画監督で俳優のジョン・カサヴェテスを選んだほどだった。卒業後は助監督やADとして映画やテレビ番組の現場で仕事をしていたが、東京芸大大学院に映像研究科が創設されたことを機に辞め、2度目の挑戦で進学を果たした。

 大学院の修了作品「PASSION」は東京フィルメックスのコンペ部門などに出品され、国内外で評判となる。特に世界的な評価を受けるきっかけとなったのが、演技経験のない4人の女性が主役を演じた5時間超の長編映画「ハッピーアワー」(2015年)。ロカルノ国際映画祭でこの4人が最優秀女優賞を受賞し、話題となった。

 その後、監督初の商業映画「寝ても覚めても」(18年)がカンヌ国際映画祭コンペ部門に正式出品されるなど、野心的な映画作りや表現スタイルが欧州の映画界で好評を得てきた。

 作品選定を統括するベルリン国際映画祭のアーティスティック・ディレクター、カルロ・シャトリアン氏(49)は以前、ロカルノ国際映画祭のアーティスティック・ディレクターも務めており、そのとき「ハッピーアワー」を選出している。

 受賞後に開かれた会見で、濱口監督は「カルロであれば、この映画(「偶然と想像」)の長所、美点を見てくれるのではないかという判断があった」と話し、作品をベルリンに間に合うように完成させたことを明かしている。受賞の知らせも、シャトリアン氏から直接受けたという。

 今回、コンペ部門は金熊賞(作品賞)を過去に受賞した監督6人によって審査された。濱口監督は「経験豊かな監督たちによる『審査員からの賞』が贈られたことを心からうれしく、誇らしく思う」と、作品のストーリー性だけでなく、映画の構造や製作などを含め、作り手側の目線を通して選ばれたことを喜んだ。

 今回のベルリン国際映画祭は、新型コロナウイルスの感染拡大で当初予定されていた2月開催を断念し、映画業界向けのオンライン(3月)と一般観客向けのリアル(6月)の2回に分けて実施。また、ジェンダー(社会的性別)に配慮し、男優、女優といった性別ごとの賞を廃止し、「主演俳優賞」「助演俳優賞」を選出した。

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